隆二だけのもの

「クシュンッ」

「わ、大丈夫?」


暖かくなってきたとはいえ、夜はまだほんのりひんやりした空気をまとっていて。


「ごめん俺、ベランダで何やってんの?ってな。ユヅキ抱きしめてると時間忘れちゃってダメだなぁマジで、ごめんね」


困った顔でそう言うけど。

隆二のせいなんかじゃないのに。

首を振って否定する私の背に手をかけて部屋の中へと入れる。

ベランダのドアを閉めてそこでニコっと私に微笑んでスマホを指差すんだ。


「いいよ撮って」

「でも…」

「ガラス越しでごめんね」

「隆二…」

「何でも好きに撮って。ユヅキが喜ぶなら俺も嬉しい」


本当、優しいんだから。

心配してくれる隆二の気持ちに感謝して私はスマホを構えて録画ボタンを押した。

カチっと煙草に火をつけて静かに吸うその姿に、やっぱり惚れ惚れしてしまう。

かっこいいって分かってるけど、目の前で煙草を吸ってる隆二は本当にかっこよくて。

ガラス越しでもスマホ越しでもそのかっこよさは変わらなくて。


「どうしよう、これみんなに自慢したい!!山口さんに見せたい!隆二かっこいいでしょ!って」

「ダメだってそんなの!俺はいいけどユヅキがからかわれたら嫌だもん」

「でも大丈夫じゃない?そんなにからかうかなぁ、山口さん」

「いや松岡さんにキス見られてるっぽいし…」

「あははそうだったかも!」

「俺だけのユヅキでいてほしいんだもん、会社でもどこでも…」


ドキ。

熱い瞳を揺らしてそう言う隆二に物凄い心拍数があがる。

そんな可愛いこと言うなんてズルイ!


「そんなのいつでも私、隆二だけのものだもん」


だから隆二の真似して語尾をあげて言う私に、片手で灰皿に煙草を押しやると、カランとベランダのドアを開けた。

スマホを構えている私の前に顔を寄せてそのまま近づく…


「え、隆二?」

「キスしたい」


やばい!

それ言葉にされると恥ずかしい!

でも嬉しい…。

スマホがどうなってるとか、動画また撮っちゃうの?とか、そんなことは隆二に触れられた瞬間に全部吹っ飛んだ。

いつも優しく私に触れる隆二がちょっとだけ乱暴に触れるだけでキュンっとする。

それでも私を抱く手は優しくて温かい。

隆二の舌に翻弄されて呼吸があがる。

激しいキスに隆二の腕にしがみつくとそのままフワリと抱きあげられた。


「ベッド連れてっていい?」


そう言いながらベッドに行く隆二と一緒にベッドの上に背中から沈んだ。

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