計測不能な愛の大きさ

「離れろって、後ろのおじさん!」

「えっ!?」


仕方無く隆二から離れた私がそう言うと、驚いた声を上げて。

ミラー越しに後ろを見る隆二はまだほんのり頬が紅潮していて可愛い。


「あはは、冗談!キス邪魔されてちょっとムっとしちゃった。私達が仲良しだからってね〜」

「チューしてんのバレたかな?見ないでほしいわユヅキのそういう顔…」

「そっち?」

「当たり前!ユヅキのエロさを知ってるのは俺だけがいい…」

「私そんなエロイ?」

「うん。今まで出逢った中で一番ね」

「うそ!」

「ほんと!」

「上書きされた?」

「上書き?」

「うん。隆二の歴代彼女のエロさよりも私のこと…」


チラっと私を見つめる隆二。

その瞳はいつにもまして優しい。

本当は歴代彼女のことなんてどうでもいい。

でも今日、隆二の過去を知るオミに会ったせいもあってか、少しだけ隆二の過去が見えてそんなことを口にしたのだろうか。


「ユヅキだけだよ、ほんとに。冷たいかもしれないけど、他の人はどうでもいい。俺が愛してるのは…いつだって考えてるのはユヅキだけ。何度でも言わせて…。俺もうユヅキ以外愛せない…」


真剣に答えてくれちゃう隆二だけど。

スーツで今日は格段かっこいい隆二だけど…


「うん…うん…――うふっ!」

「笑った?」

「うん、だって隆二ちゃんと真面目に答えてるから」

「あーこら!俺のことからかったの?」

「うーうん。聞きたかったの、隆二の口から。だからやっぱり嬉しい…」


ニコっと微笑むと、隆二の手が伸びてきて私の髪をクシャっとした。

甘いな。

隆二とだったらどんなクサイシーンも、クサイ台詞も全てが幸せへと繋がるなんて。



「とーちゃーく!」


漸く隆二の家の駐車場についた。

助手席から降りると隆二が手を差し出していて、その手にギュっと指を絡ませるとクスって笑い合う。


「とりあえず部屋入ったら写メ撮ってもいい?」


せっかくのイケメン姿、カメラにおさめないなんてあり得なくて。

笑いながら「一緒に撮ろうよ」って隆二が言う。


「ツーショット?緊張する!」

「なんで?」

「かっこいいから」

「ユヅキの可愛いのが大きいって」

「うーうん。隆二のかっこいいのが大きいよ」

「だめだめ、そこは譲れない!ユヅキの可愛いのがでっかい!」


ギュっと指を握る隆二にヘヘっと笑った。

どっちが大きいなんて気持ちを計るものがあったら、きっと私達の愛は大きすぎて計測不能だと思う。

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