彼女自慢
「あ、ここかな。ほら向かいのお店、あそこが臣のお店…」
小さく指差す方、男性服のお店があってそこにオミがいるらしい。
見た感じよく分からないけど、お店の雰囲気はよさげ。
「隆二も御用達?」
「うんわりと臣に見立てて貰うこともあるかも。お前に似合いそうなの入ったって言われて見に行くとだいたい買っちゃうかな〜」
「じゃあオミくんもお洒落さんだ!」
「あっちはカリスマだよ。センスもいいし。俺はかじってるだけ!かっこつけたいの!」
ホットココアの甘さと隆二の笑顔で酔いも回りそうな気分。
お酒は飲んでないけど。
隆二が飲んでるブレンドもかっこつけ?
ジーっと珈琲を見ていると「飲む?」優しくカップを差し出してくれる。
「一口飲んでもいい?」
「いいよ、全部飲んでも」
「なくなっちゃうよ、隆二の分」
「そしたらユヅキのを俺が貰う」
「うん!」
カップを握る隆二の指輪をチラチラ見ながら私は隆二の珈琲を口に入れた。
「ふふふ。苦い…やっぱブラックはだめだ〜」
「ずっと飲んでると慣れるけど、ユヅキは女の子だし、甘いの飲んでる姿が可愛いからそのままでいんじゃない」
頬杖をつきつつ、反対の手で私を見つめがらゆったりと喋る隆二の手はスッと2.3度程私の髪を撫でた。
「甘いの嫌い?」
「そんなことないよ。いっぱいは食ったりしないけど」
「ブラック飲んでる隆二やっぱかっこいい。自慢だな〜」
ふふふって含み笑い。
オミがここにやってくることをすっかり忘れていた私達は、いつもながら二人っきりの世界を作り出していたのか…
「隆二、さすがに俺が恥ずかしい…」
ポカって背中をど突かれた隆二の頭がひょこって動いた。
視線を向けた先、黒いライダースジャケットを着たパーマ頭のイケメンが立っていて。
「こんばんは、登坂です。隆二のダチっす」
ニコってえくぼを見せて微笑んだんだ。
ポケーっと見ていた私は絶対に口が開いていて。
「臣、お疲れ!こちらユヅキさん。俺の奥さん!」
「えっ!?」
「あ、未来の!今んとこ大事な彼女!可愛いでしょ!」
び、吃驚した〜!
嘘でも冗談でもないけど、そんな紹介は初めてだったから。
自慢気に私を親友に紹介してくれる隆二が何とも愛おしい。
オミは私を舐めるように上から下まで見ると、顎に手をやりながら「隆二好きそう…」そう言ってニヤっと笑った。
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