隆二の過去
隆二に抱きしめられてキスをするだけで私の世界はピンク色に変わって…
「りゅーじ…」
小さく名前を呼ぶと至近距離で溜息を零した。
私の頬に手を添えたまま「このまま帰りたくなってきた」甘える隆二が可愛くてわざとヤキモチを妬かせたくなる。
「ふふふ、オミが待ってるから行かなきゃ…」
「臣ね、臣…。よし、行くか」
私をギュっと抱きしめてからそっと離すと、助手席のドアを開けてくれた。
「ありがとう」
「全然」
普通に紳士なことできるのって結構すごいんじゃないかって。
世の中の男に対して気が利かないって言いたいわけじゃないけど、レディファーストだったりこういう些細な気遣いができる隆二って、やっぱかっこいいよなぁ…。
しみじみ思ったんだ。
「じゃ、出すね」
私がシートベルトをしたのを確認してから隆二がエンジンをかけた。
行く途中でオミにどうやら好きな人ができたらしいことを聞いた。
本当は隆二にその報告で飲みに誘うつもりだったのかな〜?って。
私と付き合ってから、土日は全部私に合わせてくれていたから、隆二だって友達と会わないとだよね…。
ユヅキが一番って言ってくれるのは嬉しいけど、ちょっと他の人の存在を忘れていたんだろうなって。
「臣って服屋で働いてるんだけどね、その向かいのベローチェで働いているロングヘアーの子が気になってるみたいで…」
「片想い?」
「そう、あの臣が!女なんて選び放題だった臣が片想いしてんのが可笑しくて」
「オミくんは学生の時のお友達?」
「そう、中高一緒で!」
「なるほど…。中高ね…隆二も選び放題だったのかな?」
私の言葉にゲホって隆二が咳こんだ。
涙目でゲホゲホしているから「大丈夫?」背中をさすってあげると「ユヅキちゃん!?何その発言!」ちょっとだけ慌てた隆二の返しに笑いがこみ上げる。
「だって隆二かっこいいから、きっと学生のころもモテたんだろうな〜って」
「いや…」
口ごもるあたり、相当遊んでたのかな〜?って。
ちょっと悔しい気もするけど、過去があって今の隆二がいるんだって。
そう思えば私と出逢った意味すら生まれるよね。
「ごめん…今は本当にユヅキだけだから。俺真剣に付き合ってる。前も言ったけど結婚もちゃんと考えてるし、ユヅキの為にしっかり働く気もあるし。だから過去はごめん…」
「イヤ」
「え?」
「過去の隆二も全部欲しい…」
冗談でそう言ったら隆二が何故かハザードを出して車を止めた。
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