モヤモヤ

駐車場に向かっている途中、隆二が「あ…」そう言ってポケットからスマホを取り出した。


「噂をすれば…臣だ、ユヅキちょっとごめん、出てもいい?」

「うん、どうぞ〜」


オミがどんな人なのか想像した所で全く浮かばなくて。

隆二の言う”群を抜くかっこよさ”が私の頭の中で回っているけど、隆二以上の人なんて専ら想像できずにいる。


「もしもし!おう、元気?まぁまぁ…。あははは、どうしたの?…」


相槌を打つ隆二はキュって何度も私の指を握り締めてくれて、電話していても意識はこっちにあるよ…――そう言われている気分になった。

そんな些細なことがすごく嬉しくて、友達と喋る隆二の声と言葉に耳を澄ませていた。


「え?マジで?どんな子?…――へえ〜臣がねぇ、片想いだなんて、マジうける!!はは、ごめんごめん。俺?俺はもう最高に幸せだよ〜。今もGWの旅行の宿取りに行って。飯も食ったからこれから帰るところ。…ん?え、今から?…ちょっと待って…」


スマホを耳から外してチラリと私を見下ろす隆二。

何となく話の流れでこれから会う感じになったのかな〜?って思っていて。


「臣がユヅキに会いたい…って言ってるんだけど、親友として挨拶したいって…」

「あは、挨拶ね、挨拶。いいよ、隆二と一緒なら何でも!オミかっこいいみたいだし!」

「…うわ、すっげぇやだ!臣呼びしなくていいからユヅキは。それから対してかっこよくないかもしれない…」


ムスってぼやく隆二が可愛くて。

今すぐ抱きついてキスしたいくらい。

こんな小さなことでも妬いてくれる隆二に私の方がキュンキュンしちゃって…。

これからオミに挨拶されることよりも隆二のヤキモチの方が私の中では断然勝っていた。


「え、聞こえてる?ああごめん!今から顔だけ出すけど…ユヅキに手出すなよ?あ、そっか。とりあえず顔出すだけ行くな。じゃあ後で」


ピってスマホをしまうと隆二は大きく溜息をつく。

そんな隆二の腕を取ってブラブラ揺らす私はご機嫌で。


「何だろう、このモヤモヤ…」


胸元を押さえて眉毛を下げている隆二の唇は、無意識でなのか尖っていて。

ここが駐車場で、今この周りには人がいないだろうってことから隆二の腕をグイっと引っ張って、車と壁の間に入ってトンっと背中をつくと、そのまま隆二の首元に腕をかけて背伸びをする――

迷うことなく私を抱きしめて隆二も顔を寄せると、ちょっと温い唇が重なった。


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