ペアリング
「…楽しみだなぁ、隆二と露天…」
想像するだけで頬が緩んだ。
牛タン利久の肉を頬張る隆二を見が私を見てニコッと微笑んだ。
スープを飲んでペロっと舌で唇を舐めると「そそる」小さく隆二が呟いた。
「ふふ、家まで我慢できる?」
「我慢できるかなぁ、自信ないなぁ。さっきからずーっとユヅキが俺を煽ってるんだもん。キューってなってるよ俺のコイツ」
人差し指でさり気なく下半身を指す隆二に笑顔が零れた。
煽ってるつもりはないんだけど、どうにも隆二と一緒にいると全て言葉にしたくなって、それから触れて欲しい。
「煽ってないよー私!隆二が好きなだけ」
「もーずるいんだから。本当ユヅキって可愛い」
そう言う隆二のスーツにほんの少し慣れてきたけど、やっぱりまだ見る度にドキッとする。
「あっ!ウソ、今気づいた!」
「え?なにが?」
ホワイトデーに買ったペアリング。
いつもは現場だからって、ネックレスで首にかけてるけど、今日はちゃんと左手の薬指に嵌められている。
うわなんか、素敵。
結婚指輪みたいにシンプルな細いものではないけれど、左手薬指につけてくれていることが嬉しくて。
パッとその手を握った私に隆二が目を大きく見開く。
「ちゃんとつけてる、何か嬉しい!」
「あ、指輪ね!そう今日現場じゃないから着けたくて。もー今頃気づいたの?もっと俺のこと見ててよねぇ」
スッて反対の手で私の頬を撫でた。
そのまま大きな手で頬を包む隆二。
温かいその温もりに思わず目を閉じたくなるけど、こんな飲食店の片隅でキスなんてできるわけもなく。
ここが個室だったらよかったのにーなんて、思わずにはいられない。
それは目の前の隆二も一緒だったようで、ちょっと困ったように微笑んだ。
「チューしたいユヅキ」
あは、それ口に出して言っちゃう?
スーツでめちゃくちゃかっこいいのに、唇をムウって突き出して小さくそう言う隆二は可愛くも見えて。
私の肉をパクって一枚食べる隆二。
「早く食べてー。早く帰ろう!せっかく今日は夜が長いんだからいっぱいできるね」
ポンポンって目を細めて笑うと私の頭を優しく撫でた。
そのままどんぶりのご飯を流し込む隆二に笑いがこみ上げる。
確かに今日はまだまだ時間が早いから帰っても時間は沢山ある。
一緒にお風呂入って、沢山キスして、いっぱい愛して貰う…
大きく口を開けて肉を頬張った。
「ご馳走様でした」
お会計を済ませてお店を出た。
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