我慢大会
「あ、グロスついちゃった…」
そう言ってそれを舐めとるように隆二の唇に舌を這わす。
「ンッ…」
「…そんな声出されたらもっとキスしたくなっちゃう…」
私の言葉に隆二がまた照れたように笑った。
「そういうの、男の台詞だよね…。いきなりユヅキに唇舐められてちょっとどうにかなっちゃいそうなんだけど俺のコイツ…」
運転席で下半身をモゾっと触る隆二にプって吹きだした。
「えへへ、でもここではダメ。こんな場所誰に見られるか。続きは隆二のおうちでシよ」
耳元でそう言って助手席のドアを開けて外に出た。
隆二は缶コーヒーの最後の一口をグビっと飲んで運転席から出ると、鍵を閉めてその場で数回ジャンプをした。
「ちょっと危ないけど…まぁいける」
そんなことをブツブツ呟きながら私の手をスッと握った。
すぐに指を絡めて恋人繋ぎに変える。
デパートの中に入ってJTBに直行。
「どこら辺行きたいとかある?」
「隆二はある?」
「俺はユヅキが行きたい所でいいよ」
「…それ私の台詞。隆二が行きたい所に私だって行きたいよ〜」
プウって頬を膨らませて隆二の腕に絡みつくとデレって緩く隆二が私を見つめる。
絡まっていない方の指でその膨れた頬をツンって突くと「可愛い」小さく呟かれて、キュンって鼓動が早まる。
隆二と付き合うまで「可愛い」を言われることなんてそうなくて。
だから最初はすごく戸惑ったというか、どうしていいか分からなくなっていたのに、最近この「可愛い」にほんの少し慣れてきているような気がして。
勿論いつ言われてもキュンってするし嬉しいし恥ずかしいけど…やっぱりそれはいつだってリアルな隆二の気持ちだから私もリアルな気持ちを返したくなるんだった。
「隆二もかっこいい」
そう言ってツンってしていた指をパクって一瞬咥えた。
「あ、ちょっと…もう…」
カアーって赤くなる隆二。
そんな隆二も新鮮で。
「温泉にしない?お部屋に露天ついてる所。私露天が物凄く好きで、いつか彼氏と一緒に入りたいな〜って思ってたの。それ、隆二に叶えて欲しいな…」
「うん、決まり!ねぇそれって俺が初めて?一緒に露天入るのって…」
「そうだよ。初体験…」
「うわ、響きがヤバ…。想像しただけで起つ…」
「ダメだから今は!」
「分かってるよ、我慢してるってさっきからずっと」
「もうちょっと我慢してね」
私達はJTBの窓口へと入って行った。
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