バカップルの予定

山口さんと松岡さんの後姿が完全に見えなくなった瞬間、二人してフウ〜っと息を吐き出した。


「ごめん、隠せなくて」


隆二の手が私の髪を優しく撫でながらそう言う。

その手に自分の手を重ねたい気分だったけど、それじゃあ一向にこの場所から発車できないような気がして、小さく横に首を振った。


「具合、本当に大丈夫なの?」

「うん!今日だけサボリ…。ダメかな、こんな彼女…」

「いいよ、早とちりした俺が悪いし。んじゃとりあえずここにいたらユヅキに触れられないから車出すね」

「うん」

「どっか行きたいとこある?」


相変わらずスーツな隆二はかっこよくて。

少し考えてふと思いついたんだ。


「GW…って実家に帰ったりするの?」

「あー…特には帰らないかなぁ…」

「旅行…行きたいなぁ…ダメかな?」


私の提案に隆二はこっちを向いて微笑む。


「大賛成!JTBちょっと見に行く?そのまま今日は外で飯食って最後は俺ん家連れて帰っちゃう!」

「うん、連れて行かれたい!」

「あはは、もうマジ可愛い…」

「隆二のがかっこいい」

「ユヅキにそう思われるなら毎日スーツで出勤しようかな」

「ダメ!困る!やだよぉ、この顔も身体も全部私のもの…」


運転している隆二の腕を握って甘えてみる。

自分でも考えられないくらい馬鹿なことしてるなって思うけど、止められなくて。

きっとこんな私を「可愛い」って隆二は言ってくれるんだって思うわけで。

そんな私の考え通り「俺今運転中!手出せないからっ!そんな可愛いことしちゃダメ!」…はたから見たら完全なるバカップル。

されど私たちはそんな甘い関係がたまらなく好きで、この空気が最高に嬉しい。


「ふふふ。りゅーじぃ」


調子づいて隆二の肩に手を置いて耳元にフーって息をかけると、ビクっと隆二の肩があがった。

大きな目で私を見つめる顔は何度見てもかっこよくて。

開いている足の太股にスッと手を乗せると「ちょっ…」少し慌てた隆二の声。


「あっは、焦ってる〜」

「いや焦るって!ここで反応したらどーすんの?ユヅキ責任取ってくれるんだろうね?」

「反応って何が?どーこ?」


ツーってスーツの上から足をまたなぞった。

隆二が首を振って缶コーヒーを一口飲む。


「今日もSだなぁユヅキちゃんってば」

「隆二がかっこいいからだもん」

「車止めたらキスするから」


…―――予告通り、JTBの入ったお店の駐車場で、隆二は私を抱きしめてキスをした。

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