ありのまま
理想のプロポーズのシチュエーションを頭に思い浮かべてみようとするけど…
頭の中に浮かんだのはドラマや映画のワンシーンで。
結局リアルな隆二がくれるものだったら何だって嬉しいんじゃないかなって、私は思う。
目をランランと輝かせて答えを待ってくれている隆二には申し訳ないけれど…
「ない…」
小さく呟くと、眉毛を下げて「え…」困惑の声を出した。
「違うの隆二、あのね…。私が思い浮かべるのはドラマや映画の素敵なシーンであって、人が一度使ったものっていうか…。だから隆二が考えてしてくれたものが、私は一番嬉しいんだって思うの…」
素直な気持ちだった。
真剣な隆二だからこそ、真剣に伝えたいって思うわけで。
私の言葉に納得した顔の隆二はフって微笑むと「分かった」ポンポンって私の髪を撫でた。
そのまま腕が私の肩を抱いてグっと距離を近づける。
頬を擦り合わせて「ユヅキ…」甘く囁いた。
一時…目を閉じて隆二の温もりを感じる。
チュって頬に、何度も小さなキスを落とす隆二。
パクって唇を合わせるだけのキスで私の頬を紅く染めていく。
でもそんなんじゃ足りなくて…
もっとちゃんとしてほしくて…
「隆二…」
ソファーの上、隆二の太腿に手をついて私から顔を寄せた。
一瞬「あは」って笑う声がした後、私の背中に腕を回して隆二が私を自分の上に乗せる。
ソファーの上に座る隆二と向かい合わせでラッコ座り状態のまま隆二の首に腕をかけてそっと唇を重ねた…
鬚が当たってくすぐったくて、でもそれよりももっともっと隆二を求めてしまう私がいて。
こんな風に情熱的なキスを自分から迫ったことなんて今まであっただろうか…。
舌を出し入れする私に答えて、吸いつくように舌を絡ませる隆二をギュっと抱き締めた。
途端にこの部屋一面に甘い空気が流れて。
ああやっぱりダメだ。
隆二といると、いつだって隆二が欲しくなる。
こんなに自分が抑えが利かないなんて、思いもしない。
「隆二…私…」
「しちゃう?」
目を細めて微笑んでいる隆二。
その笑顔すら反則で。
小さく頷いたら隆二がその場で上着をガバっと脱ぎ捨てた。
「俺も、ずっと欲しかった…ユヅキのこと…」
そう言うと、勢いよく隆二が私の後頭部を抱えながらソファーに押し倒した。
そのままさっきとは違う、もっと激しいキスをくれる隆二の首にそっと腕を回したんだ。
また幸せな時間が始まった―――。
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