小さな不安
「うち来る?」
バイクの後部座席に乗せられた私がそう聞くと隆二は「え?いいの?」ちょっとだけ驚いた顔で嬉しそうにそう言う。
「うん、週末ずっと隆二の所だったから…」
そういえば私の家に入れたことなかったな〜なんて思って。
「はぁ〜…よかった…」
ホッとしたように私の胸元に顔を埋める隆二。
そんな隆二をギュっと抱き寄せながらもどうしてそんな顔をしたのかさっぱり分かっていなくて。
だから顔をあげた隆二がちょっとだけ泣きそうに見えて胸の奥がキュンっとする。
「隆二?」
「やっとユヅキの部屋に呼ばれた…。疑ってた訳じゃないんだけどね。ユヅキの部屋には俺が行っちゃいけない理由でもあるのかな―…とか勝手に何か思っちゃってて…それでじつは少しだけ不安だったの。だからめっちゃ嬉しい…」
「ごめん私、そんなこと気づかなかった…」
「いいよ、俺が勝手に思ってただけだし!」
「隆二…」
「泊まってもいいよね?」
メットを私の頭に被せてそう言う隆二は笑顔で。
その笑顔が見れて嬉しくて「勿論帰すつもりはないよ」男前な台詞を浴びせた。
そんな私に隆二がほんの一瞬眉間にしわを寄せて…
「メット被せちゃったからキスできないじゃん…」
「あはは。後でいっぱいできるって」
「今したかったー」
子供みたいにプウって頬を膨らませる隆二の唇に指をつけると、その指を自分の唇につけた。
「関節キス…なぁんて…」
昭和のトレンディードラマみたいな展開になって自分でやってて物凄く恥ずかしくなった。
目の前の隆二もさすがに笑っていて、私を一度ギュっと抱きしめると身体を離してニッコリ微笑む。
「ユヅキの家って○▽☆駅の方だよね?」
「うん。とりあえず近くのスーパーでご飯買おうか?」
「だね。早く独り占めさせて〜」
「仕方ないな〜」
私を乗せた隆二のバイクは安全運転ながらも猛スピードで地元のスーパーで止まって夕飯の買い物へと二人仲良く手を繋いで入って行った。
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