プロローグ


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朝起きて、隣に寝ている彼に吃驚した。


「…うっそ…」


バッてベッドの中、掛布団をめくって身体を確かめる。

勿論ポンで何も着ていない私。

思い出そうとしても何も頭が働かなくて…。


「どうしよう…」


ユサユサと彼を揺すってみるも、「う〜ん」って甘い声しか出てこなくて。


「つかここ…ラブホ…?うーわやばいマジやばい…」


こんな展開絶対ないと思っていた。

こんなドラマみたいな展開あり得ない…。

だって…だって…


「ごめん、先に帰るね…」


そう言って彼の髪をそっと撫ぜると私は服を着てこのホテルを出た――――


すぐにスマホで電話をかける。


「出て出て出て出て、はやくぅ〜!!」


キョロキョロしながらタクシーを拾おうにも車なんて通っていなくて。


【…あい?】

「あ、もしもし!どうしよう私、ユヅキ…お願い迎えに来て!!」

【…どこっすか?】

「え〜分かんないかも…」

【分かんないってそんなの行けないじゃないっすか…】

「そ、そうだよね…えっとどっかのラブホの前で…」

【…はい?】


疑わしき声でそういう電話口の彼が私の前に現れたのは電話をしてから20分過ぎぐらいで。


「マジ何やってんすか…」


そう言う彼に「ごめぇん…」泣きそうな顔で答えた。

吃驚している私の話をタクシーの中で聞いてくれて、ちょっと落ち着いてきた。


「全くいい年して何やってんすか本当…」

「だから何も覚えてなくって…」

「いやだからそれがあり得ないって…」

「ですよね…すいません」


ポカっと私の頭を殴るわけで…。


「直人さんにバレたらどうするんっすか…」

「死んじゃうよ…」

「だったらちゃんとどうだったのか確認してください」

「うげぇ、怖い!」

「じゃなきゃ自分、フォローできないっすよ…」

「はぁ〜い…」


絶対に直人にバレちゃいけない秘密を今日私は持ってしまったなんて――――。






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