臣と隆二の本音
「お前いつからゆきみのこと好きだった?」
臣のちょっと掠れた声にドキっとする。
あたし達の、話…?
「…いつからって小さい時からずっと好きだったよ俺…」
「そうじゃねぇよ。隆二ずっと奈々のこと見てたろ?」
「…うん。少し前まではたぶん俺奈々を一番大事に思ってた。岩ちゃんに取られたくないって…。俺の気持ちに気付いてたから臣はゆきみにベッタリだった―――当たり?」
「…俺はガキん頃からずっと奈々が一番だった。ずっと変わらず今も、これからも…。さっきちゃんと奈々に伝えた。ずっと言いたくて言えなくて、あいつのこと何度も傷付けたから、これからは思いっきり甘やかしてやりてぇ…」
「うん。ゆきみを追いかける臣を想っていつも苦しそうにしてたから奈々。俺が臣の変わりにって思ったこともあったけど、できなかった。俺はゆきみが好きだから。正直、臣にも触らせたくない…って思うのはゆきみだけで。こんな風にゆきみを好きになる運命だったんだって…」
「ゆきみ…もそろそろ隆二への気持ちに気付く頃だと思うけど」
「待つよ。何年でも。今までずっと一緒に生きてきたんだもん。これからも俺達は一緒に生きていくんだよ。ね、臣…」
「ああ」
初めて聞く二人の本音に胸が熱くなる。
きっとあたしが聞いても臣ははぐらかして何も言ってくれないかもしれない?って思っていたけど、隆二にしか話さない臣の本音に涙が溢れてしまう。
「奈々…。よかったね、臣にちゃんと告白…わたしも嬉しい。奈々が嬉しいとわたしもすごく嬉しい」
「ゆきみありがと…」
自分達の気持ちが相手の迷惑になっているかも?そう思って気持ちを閉じ込めようとしたこともあった。
でもみんなそれができなくて、素直になった今、やっと繋がった。
「あたし、どんなに苦しくても臣のこと好きな気持ちは永遠に消せない…」
「わたしも、素直に言いたい…隆二に好きって…」
そう言ったゆきみはゆっくりと立ち上がる。
「直人のとこ、行ってくるね…」
「うん。待ってる」
「うんっ!」
笑顔で頷いたゆきみだけど、きっと泣きながら戻ってくる。
人を真剣に好きになるということはそういうことだと思う。
隆二と直人くんの間で苦しんでいたゆきみの闇が、ようやく晴れ間を見せたんだった。
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