一生臣だけ
ずっと聞きたかった、ずっと欲しかったその言葉に「あ、たしも…」微妙な返答しかできない。
あたしを見つめる臣はいつも以上に優しくて。
ずっとゆきみに向けられたものだと思っていたから。
色々聞きたいことはある。
でも今、臣の温もり以上に大事なものなんてない。
「これからずっと、奈々の傍で奈々を想って、大事にする。だから…変わらず俺のこと好きでいて…」
まるであたしがずっと臣を好きだったことを分かっているような言い方に微笑む。
ゆきみと隆二のことも色々ある。
でも今だけは臣のことだけ思っていたい。
「一生臣だけだよ」
「奈々…」
海も夜景も星空も目に入らない。
臣しかいない。
そっと目を閉じると当たり前に重なる唇。
同時に抱きしめる腕に力がこめられて…
覚えたての慣れないキスを何度も繰り返した。
二人で手を繋いでテントに戻るとそこには隆二がいた。
でもすぐに告白だと思う、女子に呼ばれて出て行く。
「さっきからそれの繰り返し。俺に告る女一人もいねぇの、おかしくない?」
岩ちゃんが不貞腐れた顔でそう言っていて。
「仕方ないよ。昔から隆二はイベント事で告白されること多かったし。臣も、ね?」
「そうだっけ?」
覚えてないって感じ、眉毛をピクリとあげる臣はタオルをとって「シャワーしてくる。手出すなよ、岩ちゃん」ドカって足で蹴っ飛ばすと岩ちゃんが前のめりにつんのめった。
「凶暴だなぁ。出さないよこれでも見境なくないし」
「はは、信用してる!」
何事もなかったかのような臣だけど、あたしの頭をポンポンって優しく撫でてから出て行った。
「あ、星、綺麗だったよ、岩ちゃん!外見ない?」
「うん、あ、ゆきみちゃん!お帰り」
岩ちゃんの言葉に振り返るとゆきみが複雑そうな顔をして立っていて。
「ゆきみ?どうか、した?」
「隆二は?」
「…あ、うん。今呼ばれて…」
「そう、なんだ…」
あれ?なんか機嫌悪い?
直人くんとお散歩してきたんだよね?
「直人くんは?」
「シャワー行くって」
「あ、なるほど!今臣も行ったよ」
「うん」
…黙り込んで鞄の中をガサガサ漁ると、隆二とお揃いのTシャツを取り出した。
「やっぱり、持ってきてたんだ」
あたしの言葉にそれをすぐにしまいこんだ。
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