臣が見せてくれた景色
「岩ちゃん…?」
名前を呼んだらポトっとあたしの火花と岩ちゃんの火花が同時に落ちた。
「あーあ、終わっちゃった。俺が勝ったらこの後の自由時間奪ってやるつもりだったのに、ついてねぇ…」
見えたのは黒いスニーカー。
顔を上げるとそこにいたのは臣で。
「奈々行くぞ」
「へ、臣?」
グイって手首を掴まれて立ち上がられられた。
そのまま岩ちゃんに背を向けて歩いて行く臣は無言で。
いつもあたしがいると無口になる臣。
「臣ー!キスとかしないでよー!」
岩ちゃんが後ろから叫んだ声に対して、振り返った臣は「んなことしねぇーよ!」しっかり答えたんだ。
そんな大袈裟に否定しなくてもいいのに、なんて思う。
「臣、どこ行くの?」
「いーから」
無言で少し歩いた先、臣がゆっくりと振り返ったその顔は優しく微笑んでいて。
「奈々に見せたくて…」
大きな木の奥にある煌びやかな夜景と星空に言葉を失う。
トクトク小さな音を立てて高鳴る心音に隣にいた臣がふわりとあたしを後ろから抱きしめた。
「好きだよ、奈々。ずっと言いたかった…」
耳元で聞こえたその声に涙が溢れた。
ずっと欲しかった言葉がやっとあたしに届いたんだ。
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