指切りげんまん




【said 奈々】


夜になるとキャンプファイヤーが行われた。

すっかり雨も止んで燃え上がる炎をボーッと見つめている。


「なんか、色々あるなぁ…あたし達」


思わず盛れた言葉に隣のゆきみが膝に顔を埋めた。

炎が消えたらキャンプファイヤーは終わりで自由時間。

ゆきみはきっと直人くんと過ごすんだよね?

迷いの見えるゆきみの背中をポンっと撫でると「奈々…」泣きそうな顔を上げた。

隆二と直人くんの間で悩み苦しんでいるゆきみをなんとかしてあげたいと思うものの、こればっかりはゆきみの気持ちが第一だから。


「今夜はきっと星が綺麗だよ、ゆきみ。ね、夜中に抜け出してこっそり二人だけで星見よう?」


なんてことない話題でゆきみの集中を逸らすと、嬉しそうにゆきみは「うんっ!約束!」小指をあたしに差し出してきた。

だからそれに指を絡ませて小さく二人で指切りげんまんをした。

せっかく来てるんだからやっぱり楽しまなきゃって思う。

色々あるけど、それがあたし達なんだって。


炎が燃え尽きるのと同時、直人くんがゆきみを迎えに来て、連れて行ってしまった。

そして何故かあたしの隣には岩ちゃん。

こっそり持ってきていたのか、ズボンのポケットから取り出した線香花火をあたしに差し出した。


「これ一緒にやろうよ。ね?」


ちょっと強引な岩ちゃんに戻っていてホッとする。

いつも痛いとこつくけど、岩ちゃんの気持ちは真っ直ぐなんだって。


「儚いよね、線香花火って。好きだけど…」

「え?」

「で。ゆきみちゃんは答えでたって?」

「まだだけど…」

「結構優柔不断だよねー。直人と隆二って全然違うタイプじゃない?どこがいいんだろ、アイツらの。俺のがよっぽどかっこいい。まぁ今更惚れられても困るけど」


…前言撤回!!

やっぱり岩ちゃん酷い!

ジロっと睨むと「答えださなきゃ苦しみは取れないよ」岩ちゃんが小さく笑った。



- 91 -


prev / next