お邪魔虫
「肉焼けたから皿に取り分けて貰える?」
網の上でもくもくと肉を焼いていた直人と直己くん。
ELLYは何故か違うグループにヘルプに借り出されていて、ここにはいなかった。
「はーい。わ、美味しそう!」
「食欲ある?大変だったね?」
班長の直己くんがボソっとそんな言葉をくれた。
いつも周りに目を配っている人で。
わたし達のこともある程度分かった上で、何も聞かないでいてくれている気がした。
「うん、すごいお腹空いてて…ありがとう」
「それならよかった。片岡の愛情たっぷりだからまぁ、美味しいよ」
「なんだその上からは…」
全然直人のが身長が低いのに、何でか偉そうで。
「…妬いたの。広臣と話してるゆきみに…。だから連れてきた」
そう言って顔ごと逸らしたんだ。
耳が赤くなっているから照れてるんだって。
可愛いって思うけど、わたしもそんなこと言われて恥ずかしくて。
「臣は奈々だけだよ。それ確認してたの…」
「そっか、よかった」
振り返って八重歯を見せる直人に、キュンっとする。
甘酸っぱい空気でいっぱいで微笑んだわたしに「可愛い」って直人の声が追い打ちをかける。
直人とこのまま付き合っていたらきっと幸せで。
それはわたしも分かっている。
「完全に俺の存在なくなってるよね」
わたしになのか、直人になのか直己くんの言葉に思わず笑った。
そんなつもりないって、そう言ってもいいのに「俺ゆきみしか見えてないかも…」なんて言うからまた恥ずかしくなる。
何だか言葉攻めにあっているのか直人は感情をモロに出してきて、それが少し心地いい…
そう思っていたんだけど。
「ゆきみ、テーブルふける?」
カレーをよそっていた隆二がわたしを呼び寄せた。
着々と準備は進んでいて、もうちょっとで完成しそう。
「あ、うん!今ふくから待って」
「ごめんね」
「ううううん」
布巾を持ってテーブルをふくわたしに隆二が耳元で「邪魔してやった」ニコって笑うんだ。
いつも真面目な隆二らしからぬ表情だったけど、本来隆二はこういう顔も持っていて。
わたし達四人で過ごす時はよくよくそんな顔をしていることも多い。
それがわたしには嬉しくて。
「もう」
「言ったでしょ?諦めないって。俺ゆきみのこと絶対誰にも渡さないから!こーいうのどんどん邪魔してくからね」
笑いながら言うから冗談ぽく思えたけど、それが隆二の本音だって…。
ドキドキするよ。
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