臣の告白




「煙いよ〜」


BBQの準備で網で肉を焼いてると、煙が自分の方に吸い寄せられてきて目がシパシパする。


「あっち行ってろ、奈々と!」


健ちゃん岩ちゃんと魚を炙っている奈々の方へわたしを押すけど、どっちにしても煙たつよね…。

何となく臣と話したくて、臣の所にきたものの、思わぬ煙に苦戦中。


「臣…奈々のこと好き?」


わたしが聞くと視線を下ろす臣。

クって喉を震わせて笑うと、「ゆきみは隆二が好き?」答える前にそう聞き返された。


「答えになってない!臣が言わなきゃ教えない!」

「俺…隆二となら構わねぇ。けど直人と…っつーならやっぱ納得できねぇ!」


相変わらずの臣の性格に内心可笑しくて。

自己チューな臣の発言にジイっと見つめる。

なんだよって顔で見つめ返す臣にわたしが小さく続けた。


「直人と付き合ったら臣が邪魔すんの?」

「…するよ」


さっきの奈々の臣を信じる発言を聞いたせいか、臣の言動に腹すらたってきて。

そうやって曖昧な態度でわたしと奈々を惑わせてきたと思うと悔しい。


「じゃあ直人を選ぼうかな…」


そう言ってクルリと臣に背を向けて直人の方へと向かうわたしの腕をギュっと握った。

真後ろにピッタリ臣がくっついていて。頭に臣の顎が当たっているのを感じる。

臣の鼓動がわたしの背中にトクン…ってしていて。


「行かせねぇ」


そう言う臣に振り返って言ってやったんだ。


「奈々とのキスは嘘なの?」

「え…」

「直人に聞いたけど、さっき崖の下でキスしてたって…」


わたしの言葉に臣がアチャーって顔で苦笑いをする。

そんな顔したってダメ。

奈々を悲しませるようなことはいくら臣でも許さないんだから。

小さく息を吐くと…「好きだよ、奈々のこと…すげぇ好き…」恥ずかしそうな臣の告白。


「奈々にちゃんと言わないの?」

「…言うよ、後で」


そう言った臣の顔は清々しくて、その言葉に嘘はないってわたしも信じられる。


「よかった。臣も奈々も幸せならわたしも隆二も嬉しい」

「お前たちも…」

「ゆきみ!」


呼ばれたのは直人で。

奥でガンガン焼けたものを紙皿に取り分けている。


「ちょっと手伝って!」


直人の言葉にわたしは臣から一歩離れた。


「勝手だけど、やっぱゆきみのことも好きだから、隆二であってほしいよ」


すごく優しい言い方だった。

これが臣の本音だったら嬉しいなって思いながらも、カレーをよそう隆二を見てキュンっとした。



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