親友の強さ




え、あれ?

わたし結構恥ずかしくなりながら言ったんだけど奈々は直人に対して怒っていて…。


「奈々?」

「だって直人くん、誰にも言わないよ!って言ったのに!早すぎるよ、ゆきみに言うの!」

「直人が言わないって言ったの?」

「言ったよ…。アキラ先生達が来てくれて上まで引き上げてくれて、そこであたしと臣に言ったのに…」


何となく想像がつく。

でもその流れがあったからわたし、直人とキスしたんだろうなって。

奈々と臣が何もしていなかったらそんな話題でないし、そんな空気もなかったと思う。


「直人ね、隆二が奈々を好きだと思ってて。だからすごい勢いで奈々の所に降りて行った臣に、何だか愛を感じて、それでそんなこともあろうと、自分が残ったんだって。隆二が傷ついたら可哀想だからって…。まぁそれは直人の勝手な思い込みだったんだけど…」


わたしの言葉に奈々がほんのり冷静な顔に戻った。


「直人くん、それ切ない奴。でも…直人くんでよかった…」

「臣に好きって言われた?」


てっきり言われてるもんだって思って。

キスなんてするからには好きだって気持ちは絶対で…。


「そういうのはない…の」

「へ?ないのに、したの?」

「うん。分かったから、臣が同じ気持ちでいてくれてるって…。まだちゃんと言葉は貰ってないけどあたし、臣のこと信じてる。不安はないよ」


その凛とした姿は、女のわたしでも見とれそうなくらい奇麗だった。

そんな風に強く相手を信じられる奈々を、ある意味羨ましいとも思えた。

わたしにはまだそんな強さなくて、直人と隆二の間をいったりきたり。

キスをしたからって、気持ちが見えるなんてことはなかった。


「ゆきみはどうだった?」


奈々の言葉は直人と隆二への気持ちをさしていて。

小さく首を振るわたしにニコっと微笑み返してくれる。


「焦る必要ないから、ゆっくりでいいよ。あたしはどっちを選んでもゆきみの味方だから」

「うん、奈々ありがとー」

「うん、じゃあこのテント、男子にも貸してあげよっか!」

「だね!」


一通りの準備が終わったわたし達は、ようやくテントから出ると、河原の空に星が瞬き始めていた。


この後、お昼に作っておいたカレーと、それからBBQの準備。

ご飯を食べたら少し自由時間がある。

直人と二人になると思うとやっぱり胸がドキドキする。

でも隆二を想うとチクっと切ない気持ちになるんだ。



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