諦めない
「何って、テント一緒じゃん俺ら!だからゆきみの隣で寝たい…」
「それって下ネタ?」
たぶん全くそういうつもりで言ったわけじゃないんだろう隆二に対して、ちょっとだけ呆れた臣の言葉に、キョトンとわたしを見上げる隆二。
「それはゆきみ次第だろ…」
隆二の口からそんな臣みたいな野蛮な言葉が出てくるなんて誰も思ってもなくて。
身体ごと固まってしまったわたしの腕をギュっと握ったのは直人。
「よく俺に聞こえるように言うなぁ…って隆二お前、ゆきみだったとかマジやめて。今までが今までだったから俺てっきり…」
直人の視線の先には奈々がいて。
さっき隆二のわたしへの想いを知った直人が言いたいことは分かる。
「俺ゆきみのことマジで好きだから」
堂々とそう言う隆二に胸の奥が小さくキュンっとする。
そんなわたしを分かってか、直人が繋いだ手に力を込めた。
「嬉しくない告白だっつーの。広臣も広臣で…」
頭いてぇ…って直人が俯いたから「直人?」至近距離で直人を見つめるとちょっと困惑した顔で優しく微笑んだ。
「とにかく!ゆきみはあたしと一緒に眠るんだから、誰も隣にはさせないから!」
奈々がこの場を丸くおさめるべくそう言うと、スッと奈々の隣、臣と反対側に座った岩ちゃん。
「んじゃその奈々ちゃんの隣に俺、寝ちゃう!つーか俺だけ除け者にしやがってお前ら!アキラ先生に話つけてきたから。俺も同じ班にして!って」
「はぁ!?」
今度は臣があり得ないくらい崩した表情で岩ちゃんを睨んでいて。
「いーじゃん別に。付き合ってるって言われてないもん俺、奈々ちゃんに。横から奪うなんて反則しねぇよな、臣は!」
「いや言わなくても答え出てるから」
余裕を見せる臣がちょっと可愛い。
そんな臣の言葉を嬉しそうに聞いてる奈々がまた可愛くて。
「うーわ、そんな嬉しそうな顔しちゃってさぁ。言っとくけど、俺もそう簡単には諦められないから!そんな簡単な気持ちだったら最初から好きになんてなんないし、好きだなんて言わないから」
岩ちゃんの真剣な想いにシーンとする。
「臣のせいで俺、いつも辛そうな奈々ちゃん見てきたんだから、俺は臣なんて認めない」
キッパリ宣言する岩ちゃんは男らしい。
正直さっきの岩ちゃんを見て、しばらく奈々とは距離を置くものかと思ったけど…
「火ついちゃったね岩ちゃんも」
直人がわたしの耳元で言った言葉に胸がドクンっと音を立てた。
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