50%のキス




繋がれた手から隆二の想いが伝わっている気がして身体が熱い。

諦めない…って言う隆二を、心のどこかで喜んでいる自分がいる。

隆二の言う通り、ここに直人がいないってだけでこの想いを強くしていい気になりそうだった。


「Tシャツ。本当は持ってきてるでしょ?」


隆二がわたしを見つめながらそう聞く。

前を歩く奈々と臣は、後ろのわたし達を気にすることなく喋っていて。

あんな自然な二人を見るのはいつぶりだろうか…


「忘れたよ…」

「ゆきみの嘘なんてお見通しだから」


返答に困ったわたしはあえてその言葉をスルーして隆二の腕を引き寄せた。

耳元に顔を寄せて小さく続けたんだ…―――「さっきね、あの崖の所で奈々と臣、キスしてたんだって!」さすがの隆二も目を大きく見開いて「マジでっ!?」パアーっと表情を明るくさせる。


「うん。直人がずっと見てたって」

「……そう、なんだ」

「奈々と臣が一緒にいるの、嬉しいね」

「うん。…俺もしたいな…ゆきみと…キス…」


…―――な。


「でも待つ。ゆきみの気持ちが100%俺に向くまで。…でもしたいけど…99%ぐらいでも…」

「………」


何も言えないわたしに隆二が視線を向けて。


「直人とこれ以上してほしくない…頭おかしくなりそう…」


見つめる隆二の顔は複雑で。

こんな風にわたしを想って切ない顔をする隆二を嬉しく思う。

でも、心の奥にいるのは隆二だけじゃない。

少なからずいつだってわたしに真っ直ぐでわたしに愛をくれる直人だってわたしの中に確実にいる。

決めきれない自分が嫌で嫌で仕方ないのに、この期に及んで隆二への気持ちを試してみたくなる。


「50%じゃキスできない?」

「…――え?」

「隆二わたし、隆二のこときっと好き。でも直人のこともやっぱり大事に思ってる。分からないの、どっちなのか…」

「ゆきみ…」


隆二の腕がわたしを引っ張って廊下から逸れた。

使ってない部屋のドアをあけてそこに入る。

電気はついてないから真っ暗で、でも目の前に感じる隆二の息使いにドキっとする。

キスしたらハッキリするかも…なんてわたしの甘い考え。

それにのってくれる優しい隆二。


「俺は100%ゆきみが大好きだよ…」


そんな声のすぐ後に触れた隆二の唇―――

ほんのり冷たくて甘い。

触れるだけの小さなキスの後、ほんの隙間から隆二の舌がわたしの中に入り込む…

直人とは違うやり方に隆二にギュっとしがみついた。



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