ベストメンバー




お寺巡りが中止になって、バスで河原まで戻ることになった。

奈々のことは大事にはしていないものの、アキラ先生がしつこく聞いてきて。

だからわたしと奈々でアキラ先生に真実を話した。


「大人から言わせりゃ青春してんな〜ってなるけど、当事者達はそんな安い言葉じゃ受け取れねぇよな〜。分かった、俺の責任でお前たち4人は全員小林の班にする。それから見張りに山下と片岡とELLYもつけてやるよ。そんだけ見張りがいりゃ大丈夫だろ?」

「いいの、アキラ先生…」

「ああ、いいよ!俺そんな小さい男じゃねぇし!」


何だかちょっと意味不明だけど、この先のキャンプを奈々や隆二や臣達と一緒に過ごせることになってめちゃくちゃ嬉しい。


「までもとりあえずバスは今の班で移動だ。変更は河原に戻ってからな」


ポンポンってアキラ先生が奈々の頭を撫でてニッコリ微笑む。

超ご機嫌で先生達の部屋から出ると廊下にいたムスっとした臣と至って普通の隆二。


「隆二、奈々と臣も同じ班でいいって。あと見張りで直人くんと健ちゃんとエリーも一緒の班って。これってすごいベストメンバーだと思わない?」

「全然思わない!直人だけはいらなかったよ俺…」


素直にそう言う隆二が可笑しくて。

隣の奈々もそんな隆二に笑っている。


「何怒ってんの、臣?」


わたしがそう言うと「別に」って。

だから今度は隆二に向かって聞いてみた。


「臣、なんで怒ってんの?」


隆二は臣をチラっと見てから少し困ったように目を逸らして。

奈々を見てニッコリ微笑んだ。


「ヤキモチだって。アキラ先生に!」

「ちょ、隆二!!」


慌てて臣がそう言うけどもう聞いてしまったわけで。

奈々が「え?」って顔をしている。

そんなこと思いもしなかったって顔で。


「あーもう、いいから。ほら早く行くぞ!」


そう言いながらも臣はスッと奈々の腕を掴む。

小柄な奈々が臣に引っ張られてついていってる姿が可愛くて。


「俺も妬ける…。奈々と臣が一緒なのはすげぇ嬉しいけど、ゆきみのこと独り占めにしたい…」


そう言いながら隆二がわたしの手に触れて、そっと指を絡ませた。


「隆二、手は…」

「いいでしょ。今ここに直人いないし…」


思いの外強引な隆二は初めてで。

いつだって優しい隆二はわたしや奈々の気持ちを第一に考えてくれていた。


「でも…」

「俺決めたんだ。自分の気持ちに正直になるって。絶対ゆきみを諦めない」


カアーっと全身熱くなった。




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