おしゃべり
【side ゆきみ】
奈々の気持ちを聞いたわたしは心中穏やかで。
生まれて初めての恋がどんなものかまだ分かっていなかったせいで、それが恋なのかそれとも友情なのかも分かっていなかった。
色々わたしを試してくる臣に勿論ドキドキしたし、好きなんだとも思った。
でも臣の相手が奈々であるというのなら、それは素直に嬉しいと思える。
相手が隆二だったらどうしよう…って焦りしかないわたしは、やっぱり隆二のことが好きなんだと。
これがきっとわたしの恋なんだと。
「片岡くん!大丈夫だった?」
コテージの医務室から聞こえた声にわたしは足を止めた。
6組のサチコの声は明らかに直人くんを心配しているもので。
「あーうん。平気」
素っ気なく答える直人くんの声にほんの少しだけ心が熱くなる。
ガラっとドアを開けると当たり前に視線を集めるわたし。
「ゆきみちゃん!大丈夫?」
そう言ってベッドの上に座っていた直人くんがわたしの所へ駆け寄った。
「うん、ありがとう」
「無事でよかった…奈々ちゃんも大丈夫だった?」
「うん、何かピンピンしてる!」
「ふは、マジか!まぁ…そうだろうな、あの二人…」
直人くんが怪しく微笑む脇で、こっちに近寄ってくるサチコ達。
わたしを見て何か言おうと開いた口。
「悪いけど、彼女のことに口出ししないで。俺がゆきみのことマジで好きなんだから」
キッパリとそう言葉にする。
何も言えないサチコ達は悔しそうにこの医務室から出て行く。
と、同時に廊下から声がして保健の先生もここから出て行った。
二人っきりにちょっとだけドキドキする。
「直人くん」
「うん?」
「どうしてわたしと隆二を行かせたの?」
何となく疑問に思っていたことを聞いてみた。
あの状況で直人くんとわたしと岩ちゃんが戻ってもよかっただろうに。
最初は俺が…そう言った直人くんは、すぐに隆二をわたしに差し出した。
あの一瞬で一体何があったのか気になっていた。
「あはは、あれね。だって広臣が奈々ちゃんのこと押し倒しそうな勢いで崖から降りてったから!隆二が好きなの奈々ちゃんだろ?ちょっと可哀想じゃん!現にあの二人…すっげぇチューしてたし…。あ、これ言わねぇ約束だったか…」
…―――え?
「隆二が奈々を…?え?隆二が?え、奈々はだって臣だし…隆二はその…」
わたし…なんて言えないけど、それが直人くんに伝わったのかキョトンとした顔で「え?違う?」眉毛を下げた。
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