胸騒ぎ




【side ゆきみ】



「ゆきみこっち!」


突然降り出した雨に慌てて避難するようにコテージへと急ぐ。

だけどどうしても奈々のことが気がかりで。


「隆二!奈々大丈夫かなっ!?」


カッパを着ているわたしの手をしっかりと握っている隆二。

振り返った隆二は全身びしょ濡れで。


「臣がついてるからっ!」


そうだけど…そうなんだけど、何か胸騒ぎがするよ。

コテージに向かって一直線な隆二の腕を引っ張って足を止める。


「ゆきみっ!?」

「やっぱり奈々が心配っ!戻りたいわたし!」

「…俺も心配だけど、ゆきみに何かあったらって…」

「大丈夫だよ!わたしカミナリ怖くないもん!」

「そうだけど…」


なかなか戻ろうとしない隆二。

そんなわたし達の横を早歩きで抜かしていく女子達。


「あ、ねぇ!奈々見なかった?」

「え?見てないよ!」


そう言って通り過ぎた。

でもなんか違和感を覚えて。


「ま、待って!ミサちゃんはっ!?同じ班だったよね?」


わたしが言うと、バツの悪そうな顔をして…


「登坂くんと道外れちゃったから先生呼びに行くの!」

「「えっ、臣っ!?」」


わたしと隆二の声が重なる。

二人で顔を見合わせて…「奈々一緒じゃないの…?」ポツリ呟いた声に後ろから岩ちゃんが姿を見せた。


「やべぇよ、奈々ちゃんいないっぽい!さっき臣に会ったけど先生呼びに戻ったはずだって!」

「えっ!?だって今同じ班の子、知らないって…」

「クソったれ!!」


そう叫ぶと岩ちゃんはこの雨の中クルリと身体の向きを変えて戻りだした。


「岩ちゃん危ないから一緒に行く!」


そう言ったけど、走って行ってしまって。

わたし達がざわついているからか、人が集まってきた。


「ゆきみちゃん!?」

「直人くん!奈々見てないっ!?」

「見てないけど、奈々ちゃんどうしたの?」

「いないの、奈々が…」


半泣き状態のわたしを直人くんが捕まえて。


「岩ちゃん奈々を探しに行っちゃって。わたしも…」

「俺も一緒に行く!隆二今は揉めてる場合じゃない。奈々ちゃんの安全が一番だろ!」


直人くんの言葉に「分かってるよ」そう言う隆二。

離そうとしない隆二の手に掴まっていたいけど、わたしはそっと離して直人くんの腕を掴んだ。


「一緒に居て」

「もちろん!」


そう言ってわたし達は岩ちゃんに続いて雨の中、山道へと繰り出した。



―――奈々、どうか無事でいて…。



- 73 -


prev / next