小さな同盟
楽しいキャンプのはずだったのに、まさかあんなことになるなんて思いもしない――――
「では各班ごとでレクリエーションを始めます!」
それは初日の今日、テントを張ってカレー作りを終えた後、午後はレクリエーションとして登山をしながらお寺を目指すという企画だった。
ポイントポイントにクイズがあってそれを解きながらであって、楽しそうな企画だな…とは思ったものの、重たい下半身に不安が募る。
「奈々具合悪いのか?顔色がよくねぇ…」
登山開始早々臣に気づかれてしまって。
でも生理初日だなんて言いたくもなくて。
「ちょっとお腹の調子が悪いだけ。大丈夫だよ臣」
ニッコリ笑ってみせた。
「無理っぽかったらすぐ言えよ?」
「うん、ありがと」
すぐ前に臣がいてくれるってことがすごく頼りになって、目の前にその大きな背中があるだけでも少しのやる気がみなぎってくる気すらした。
「奈々ちゃんもしかして生理?」
不意にミサちゃんが耳元でそう聞いて。
あたしは素直に頷くと「やっぱり。じつは私もなの…」苦笑いを零した。
「え?ミサちゃんも?」
「うん。最悪だよね〜。何で今日?って。もうお腹痛いって言ってリタイヤしちゃう?」
コソコソと笑いながらミサちゃんがそう言って。
「あっは、もしもの時は一緒にそうしよっか!」
小さな同盟を組んだみたいで少し嬉しくなった。
「ねぇ奈々ちゃんと岩田くんって付き合ってるの?」
山道を歩きながらそんな話題になって。
さっきキスしたって言ったからだ…ってちょっと岩ちゃんを憎たらしく思えた。
「あ、違うの。岩ちゃんとは付き合ってるとかそんなんじゃなくてね…」
困った顔であたしがそう言うと、一瞬キョトンと止まったもののすぐに視線を臣にズラした。
ミサちゃんはあたしの腕に掴まって身体を寄せると、耳元でこう続けた。
「じゃあ本命は、登坂くん?」
な…まさかの言葉に慌てて首を横に振った。
でもその瞬間、臣が聞こえていたのかクルっと振り返って…「………」無言で数秒あたしを見つめるとクルリと向きを元に戻した。
「わ、聞こえちゃったかな?」
ミサちゃんが首を竦めて悪びれもなくニコって笑う。
今のは、どーいう意味?
聞こえてたってこと?
しかもあたし思いっきり否定しちゃったじゃん。
そんなあたしのこと見てた臣って…
気づくと、ほんの少し臣が先を急いでいる。
後ろから見える耳は少しだけ赤い。
もしかして照れたの…?
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