ガールズトーク
「それでは各班ごとに川釣りと料理とで分かれて作業してください!」
先生の言葉にあたしは川釣りを選んだ。
臣を囲んでいた女子たちを一括してあたしの隣にきた臣は相変わらずだるそうにしている。
「奈々ちゃん釣りできるの?」
不意にそう声をかけてきたのは同じ班のミサちゃんで。
「うん、あたし結構得意だよ〜」
「ほんと!?すごいね、教えて!」
そう言って臣を退かして隣に入ってきた。
一瞬「はぁ?」って顔でミサちゃんを睨んだものの、すぐに呆れたように場所をずらす。
「ゆきみちゃんも一緒にやろうよ!」
隣の班のゆきみを呼ぶミサちゃんに、臣と隆二も少しホッとしたように微笑んだんだ。
それから男子そっちのけで川釣りをやっていると、次第にミサちゃんの仲間の女子たちも集まってきて。
あたしはみんなに釣りの仕方を教えて回る。
でもこれだけ女子がいっぱいってこともあって、話はやっぱり恋ネタへとなっていくわけで。
「もうキスしたことある人!?」
誰かのそんな質問にゆきみがほんの少し肩を竦めた。
あたしの後ろに隠れるようにして…
「ゆきみちゃんあるんだ!?」
「…うんまぁ…」
「片岡くんと?」
聞かれて「うん」小さく答えるゆきみ。
途端にみんながゆきみの周りに寄ってきて。
「どうだった?キスってどんな感じ!?ディープキスもした?」
興味津々に聞かれて…
「わ、分かんないよ。でもドキドキする…」
真っ赤になってるゆきみが可愛い…なんて思っていたら、「何微笑ましく笑ってんの?俺らもしたじゃん!」…グイっと肩を抱かれて隣に現れた岩ちゃん。
何故か気配のなかった岩ちゃん。
突然の岩ちゃんの登場に女子達がギャアアア――!!って悲鳴をあげる。
「岩ちゃんあれはだって…」
すっかり忘れていたけど思い出したあたしのファーストキス…。
バイト先のケーキ屋さんでほんの一瞬だけど岩ちゃんにキスされたことを…。
「え、奈々ちゃんと岩田くんキスしたの?」
ミサちゃんが苦笑いでそう聞いていて。
思わずゆきみを見たらめっちゃ岩ちゃんを睨んでいて。
「キスっていうのはお互いの気持ちが入ってないとキスにならないよ!だから奈々達のは違うよ!」
ゆきみの言葉に「そりゃないよ〜ゆきみちゃん」岩ちゃんががっくりしている。
でもそんなゆきみにニヤっとするとこう続けたんだ。
「じゃあゆきみちゃんと直人のもキスじゃないんじゃないの?」
空気が凍った気がした。
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