応援する
【side 奈々】
少し気になっていたゆきみと隆二のお揃いのTシャツ。
忘れたって言ってたけど…着れないんだろうな…って。
隆二から逃げるように直己くんと野菜を洗いに行くゆきみの後ろ姿を見つめるしかできずにいる。
「隆二、平気?」
あたしが声をかけると自嘲的に笑う隆二。
隆二にこんな切ない顔をさせられるのはゆきみだけだよね…
「奈々ごめんね…」
「え?」
「俺バカみたいだよね…」
「なんで?」
「…色々。奈々のことも、ゆきみのことも…中途半端…」
苦しそうな隆二の顔。
今まで恋とか愛とかで悩んできたこともなく。
そりゃ告白されたりはしたけど、あたし達の中では四人でいることが全てだったから誰も他の人にそんな気持ちを持つこともなかった。
でもそれは高校生になった途端ガラリと変わってきて。
先を急ぐゆきみに必死で追いつきたいのかもしれない、隆二も…臣も、あたしも。
「隆二のこと、応援するよあたし!」
励ましたくてそう言ったのに、隆二はどうしてか泣きそうな顔であたしの腕をギュっと握る。
「ダメだったら奈々んとこきてもいい?」
ふざけているのか、真面目なのか…隆二の本音があたしには見えなくて。
そうやって話すあたし達を、遠目からゆきみが見ていたことすら気付かなかった。
「だーめ!ゆきみが幸せになるならあたし、何だってする!隆二だって突っぱねるよ!」
「えー…じゃあ俺一人になっちゃうじゃん」
「弱気だなぁ。そんなんじゃゆきみのこと直人くんから奪えないよ?」
「やだよ、絶対」
「じゃああたしのことなんて考えないで、隆二の気持ち大事にして…ね?」
背の高い隆二を見上げてそう言うと、ほんの小さく揺れる瞳。
真っ直ぐな瞳に迷いはなくて。
だから純粋に隆二の想いを応援したい…そう思えるんだ。
好きで直人くんと付き合ってるわけじゃないゆきみ。
直人くんの気持ちを思うと切ないけど、あたし達が過ごしてきた時間には測りきれない。
もう誰もあたし達の中に入ってこないで欲しい。
「奈々、ありがとう。臣はきっと奈々のこと好きだよ」
ポンって隆二の手が離れてあたしの背中を優しく叩く。
「ガンバレ」って言われたような気がした。
そこに何の根拠があるのかは分からないけれど、隆二に言われれるとそうなんじゃないかって思えなくもない。
だからそんな思いで臣の方を振り返ったら、そこにはゆきみを見つめる切ない臣がいて…
―――やっぱり胸が痛い。
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