女子達の逆襲




「え、あれ?」


荷物をコテージに置いて、いざ河原にテントを張る準備をすることに。

それぞれだいたいの場所は決まっていて。

隣に来た班を見て思わず笑顔が溢れた。


「奈々!臣!」


わたしの声に二人共視線を向けて。


「ゆきみ!うそ、隣?」


嬉しそうな奈々の顔と、安心したような臣の顔。

まさかのテントが奈々達と隣なんて一緒も同然、めちゃくちゃ嬉しい。

思わず奈々に駆け寄って手を取り合うと、その場でぴょんぴょんジャンプをした。


それから各班ごとに、テント班と買出し班に別れてそれぞれ作業することになった。


「ゆきみはどっちにする?」

「隆二は?」

「どっちでもいいよ。ゆきみと一緒に居られたら」

「じゃあテント!」


そう言ったら班の女子が全員テントを選んで。


「いやさすがに女子全員テントは困る…。誰か買出し行ってくれない?」


直己くんが困ったようにそう言って。

でも女子たちは全く動こうとしない。

理由はそこに隆二がいるからだって。


「ゆきみちゃん行ってきてよ!ついでに隣のテントの奈々ちゃんもさぁ」


嫌な言い方だって思う。

隆二と臣の幼馴染なわたし達が邪魔だって言われた気分で。


「ゆきみが行くなら俺も買出しにするよ」


でも隆二がきっぱりそう言ってくれるからそれがちょっと嬉しくて。

だけどそう言われたら女子達は「隆二くんが買出しなら私達も買出しにする!」…そうくるわけで。

直己くんの細い目が更に細くなって下がる眉毛。


「あ、じゃあわたし直己くんと買出し行く。隆二はテントお願い…」

「冗談でしょ!何で俺がゆきみと離れないといけないの?」


珍しく感情的にそう言うけど、隆二の後ろで女子たちがさも不満そうにしている。

そして睨まれるわたし。

そんなわたしを隠すように直己くんがスッと身体を入れていくれて。


「今市、ゆきみちゃんには指一本触れない。でも絶対に危険のないように守るから…テント頼むよ」


丁寧に直己くんがそう言うから、そんなお願い隆二がきかないわけなくて。


「…分かったよ。でもこれだけだから。みんなも…。俺はゆきみと一緒にいるのが最優先だから…」


溜息混じりな隆二の低い声に、女子たちは当たり前に納得なんてしていないだろうけど、とりあえずわたしを追いだしたんだ。


「ゆきみちゃんごめんね」


一々優しい直己くんに首を振る。

振り返った先、隆二が女子たちと仲良くテントを張る姿に、やっぱり胸に矢が刺さったようだ。




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