早すぎる直球
「納得してないって顔だね」
岩ちゃんにそう言われて、人からはあたしがそんな風に映っているんだって。
直人くんが悪いわけじゃない。
でもゆきみの相手が直人くんだって現実がやっぱりどうしても受け止められない。
「ゆきみが直人くんを好きじゃないから…」
―――だから嫌なんだ。って言葉は岩ちゃんに遮られた。
「ゆきみちゃんが直人を選んだのは奈々ちゃんのせいでしょ…」
岩ちゃんの直球は早くて見えずらい。
思わず顔をしかめたあたしになおも直球は続く。
「奈々ちゃんが素直にならなきゃゆきみちゃん直人に持ってかれちゃうと思うけど…。直人だって男なんだし、少なくとも少しは直人をいいな…って思ったから付き合ってるんでしょう。言っとくけど”絶対”なんてこの世の中にはないからね」
的を得た岩ちゃんの言葉にあたしは何も言い返せない。
隣に臣がいるから…なんて、臣のせいにしたくないのに。
「隆二はちゃんと動いてんじゃん!」
「…え?」
岩ちゃんが指差す方は、隣のバスで。
たぶんだけど、直人くんがゆきみの隣に座ろうとしているのを、断固として隆二が立ちはだかってどかない。
言い合っている姿がそこにあった。
「おかしいよね、隆二。カミナリが鳴ったあの日、奈々ちゃんを抱きしめた俺を殴ったのに…あんなに真剣に俺を拒否したのに、結局ゆきみちゃんが直人に取られると思ったらそれも嫌なんだって…」
「やめてよ!」
耳を塞ぎたくなる岩ちゃんの言葉に、どうしてか岩ちゃんはあたしを見てニヤリと笑うんだ。
「それってどっちの”やめて”?」
「………」
「心変わりした隆二のことなんて聞きたくないってこと?それとも―――」
一端言葉を止めた岩ちゃんはゆっくりとあたしの隣で眠っているであろう臣に視線を向けた。
「俺達三人だけが知ってた真実を、広臣には聞かれたくないってこと?」
そんなの…―――酷い。
カアーって赤くなるのが分かる。
血が顔に頭に昇っていくような感覚で、あたしは岩ちゃんから目を逸らした。
この場所にいたくない。
こんな惨めな姿臣に見られたくない。
泣きそうになる気持ちを堪えた瞬間「もうやめとけや」聞こえた健ちゃんの声に、胸がギュっと痛くなった。
「岩ちゃんやめやめ!奈々ちゃん泣きそうやんか。好きな子苛めるなんて今どき流行ってへんよ」
「健ちゃん…」
あたしが健ちゃんを見ると、ニーって優しく微笑む。
それだけで心が癒されたようだ。
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