二択の本気
「行ってきまーす!」
そう言って外に出た。
いよいよキャンプの日。
あの日、直人くんの告白を受けたわたしは、駅の外で待っていた三人に告げた。
「直人くんと付き合うことにした」
勿論ながら臣も隆二も奈々すらいい顔は見れず。
納得すらして貰えないし、絶対に認めない!って宣言された。
それでも直人くんは「どんなこと言われても俺がゆきみちゃんのこと守っていく」堂々と言い返してくれて。
臣がわたしと話をしようとする度に逃げてきた。
今は臣と話すことなんてない!って言い放って。
そうやって一週間を過ごしたわたし達。
それでもやっぱり今日のキャンプは楽しみだった。
「隆二乗せて」
「うん」
専らわたし専門になりつつある隆二の腰にギュっと腕を回す。
奈々はそんなわたしをやっぱり困ったように見ている。
だけど考えたくなかった。
直人くんにいったわたしを逃げだと思うならそれで構わない。
「誰にどう思われようと、大事なのはゆきみちゃんと俺の気持ちだから。俺を信じてね」
強く直人くんに言われた台詞を思い出す。
「ねぇゆきみ…」
「え?」
自転車を漕ぎながら隆二がそっとわたしの手に触れる。
「臣や俺が相手じゃダメだったの?」
真面目な隆二の声にドキっとした。
まさか隆二に確信をつかれるなんて思ってもみなくて。
「俺直人とは同じクラスだし、いい奴だって分かってるよ。ゆきみのことも本気で好きだろうし…。けど俺や臣がゆきみを想う気持ちとはやっぱり比べらんないよ…。俺達二人の気持ち無視してまで直人といる意味ってあるの?」
普段隆二がそんな話をしてくることなんて今まで一度もなくって。
どちらかといえば、臣の方が確信に触れるような言葉を放ってくることが多い。
「俺、嫌だな…。ゆきみが俺以外の男と一緒にいるのなんて」
「…奈々がいるじゃん」
「奈々だけじゃ足りない。ゆきみも臣も居て幸せだって思える…」
そんなこと…今さら言うなんて。
「臣も隆二も選べないよわたし達。隆二は…奈々とわたし、どっちをお嫁さんにしたいの?」
絶対に隆二は答えられないって分かってる。
そんな質問に隆二が答えられるわけないって。
優しい隆二がわたしと奈々のどちらかを選ぶなんて今まで一度もない。
だから隆二の答えは分かってる。
分かっててあえて聞いたんだから…―――「ゆきみ…。だから離れていくなよ、俺から」…ハッキリと答えた隆二の声に泣きそうになった。
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