矛盾する心
「あ、奈々これ見て見て!」
臣に腕を掴まれているあたしを見て、その繋がっている部分をほんの一瞬見たものの、すぐに視線をあたしに移したゆきみは、それを苦ともせずにニコニコしながら話かけてくる。
隆二に至ってはそれすらも気づいていないのか全く視線も合わない。
「これ四人で買おうよ」
ゆきみ達が手にしているのはサングラスで。
それをスチャっと装着した隆二は得意げに笑った。
「篤志さんに似てない?」
隆二の憧れているアーティスト篤志はサングラスがトレードマークで、「形から入るってわけ?」臣の言葉に笑顔が零れた。
「どう?奈々?」
あたしに向かって白い歯を覗かせながら構える隆二が可笑しくて声を出して笑ったら、臣の手がポンポンってあたしの頭を撫でて離れていった。
「貸して俺にも!」
隆二のサングラスを臣がつけると又雰囲気が違って…そこでファッションショーばりに色んなサングラスをかけまくっている二人を見て、自然と笑顔になっていた。
そうやって一通り買い物を終えたあたし達。
ちょうど時間も時間だったしお昼を食べようってことになってパスタ専門店に入った。
ゆきみと隣り合わせで座ってパスタを選んでいるあたし達の前、臣と隆二に回りから野次馬の如く視線が飛んでいるのが分かる。
昔から二人とも目立ったから、そんな視線も慣れっこで。
決まってあたしとゆきみを見て残念そうに溜息をつくんだ。
今はゆきみと隣に座っているこの位置が、いつか別々になったりするんだろうか…。
あたしの隣に臣か隆二が座ったり…するんだろうか…。
それが大人になるってことなのならば、あたしはずっと子供のままでいたい…
そう思う反面、幸せの道へと繋がっているのならば、一歩踏み出すのも悪くないんじゃないかって…。
結局のところ、あたしの気持ちは矛盾している。
だからそれを言葉にすることもできないし、行動に移すこともできない。
「奈々食べる?」
なんて浸っていたら目の前の隆二がバジルのパスタをクルリと丸めたフォークをあたしに差し出していて。
「うん」
そのままフォークにパクつくと隆二が優しく微笑んだ。
「あたしのもいる?」
「大丈夫!食べな!」
いつも優しい隆二。
この優しさは半端なくて…
隆二につられて微笑んだあたしを臣がジッと見つめているなんて…。
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