お揃い




「え、じゃあ俺がゆきみ専門になるよ!」


臣に続いて何の躊躇いもなく続く隆二。

そんな隆二の後ろで笑顔を向けるのはゆきみで。


「わたしだって隆二がいいもん!」

「やったね、俺達両想い!」


…ゆきみ、どうしちゃったの?

勝手にゆきみが臣を好きなんだってあたしは思っていたけれど、隆二の後ろにいるゆきみはいつものゆきみの笑顔と何も変わっていなくて。

それがすごく自然に思えてしまいそうなほどだった。

あの嵐の日、岩ちゃんを殴ってあたしを好きだと言ってくれた隆二。

それが嘘だなんて思わないけれど、ゆきみを乗せている隆二だって自然で。

もしかしたらあたしだけが勝手に思い違いをしていたんだろうか。

急に大人になっていくみんなに必死でついていっていたんだろうか。

そんな疑問を抱えながら、あたし達の買い物が始まった。


大きなショッピングモールに入ったあたし達。

とりあえずあっちで着るTシャツと短パンとスニーカーを買おうってことになって、ゆきみと並んで色んなお店を物色していく。


「あ、ここは?」


そう言ってゆきみが中に入っていくのは海外ブランドのお店だった。

男性・女性と別れてはいるものの、同じ種類のものが置いてあって、見ると臣も隆二も興味津々に服を手に取っている。


「良さげだね」


あたしの言葉に嬉しそうにゆきみが微笑んだ。

――――はずなのに。


「これ隆二に合いそう!」


いつの間にか買い物はゆきみと隆二が前を歩いて、その後ろをあたしと臣が歩いていて…

前で楽しそうに会話を膨らませている二人にそっと視線を送ってしまう。


「奈々っぽいな、これ」


センスのいい臣は服も色々集めていて。

あたしっぽいってTシャツをスッと鏡の前で合わせた。


「あ、可愛い…」

「うん、可愛い」


聞きなれてるはずの言葉が妙に恥ずかしくって、でも不意に聞こえたゆきみ達の言葉に足が止まる。


「これ一緒に買おう隆二。お揃いがいい」

「いいよ、これにしよう」


隆二の持つ籠にお揃いのTシャツをいれた二人。

それを見ている臣は複雑…と言うよりかは微笑ましく見えなくもなくて。

どうしても気になったことを聞いてみた。


「臣…」

「ん?」

「仲いいね、ゆきみ達」

「だな!」

「いいの?臣は…」


あたしの言葉に無言で見下ろす臣は真剣で。


「隆二とゆきみが付き合ってもいいの?」

「…どうした?」

「そしたらあたし、どうなる?」


不安な気持ちを臣にぶつけた。




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