後部座席




【side 奈々】


―――土曜日。

何となくみんなが楽しみにしているのが分かる。

ここ最近ほんの少しぎこちなかったあたし達の関係。

それが来週のキャンプの班決めで何となくいい方向に向かっているような気もして。

ポロンっとゆきみから入ったあたし達のグループLINE。

これから出る〜って言葉と可愛いスタンプが貼りつけられて。

すぐに既読になっていくそこに、臣と隆二も了解のスタンプが貼りつけられた。

慌ててあたしも同じようにスタンプを押して、鞄を持つと靴を履いて玄関を出た。

同時に四人共玄関から出てきて、爽やかな笑顔が飛び交う。


「おはよう」


相変わらず隆二の顔が浮腫んでいてちょっとだけ可笑しい。

エレベーターに乗って四人で下に降りると自転車置き場まで行く。


「ゆきみ髪型可愛いね」


器用に前髪を編み込んでまとめているゆきみはよく色んな髪型をしていて。

ストレートなブローしかできないあたしはいつもそれを見ているだけで楽しい。


「奈々もやってあげるよ、キャンプの時!お揃いにしよっか!」

「うん!」


頷くあたしにニッコリ笑顔を向けると、ゆきみはスッと隆二の自転車の後ろに乗っかった。

…え?

別にどっちが…って決まってない。

決まってないけどだいたいあたしが隆二の後ろで、ゆきみが臣の後ろに乗ることのが多かったせいか、一瞬目が合った臣にドキっとする。


「奈々…」


臣があたしを呼んで自分の後ろに乗れって顔を動かして。

だからあたしは小走りで臣の所まで行ってその大きな背中に掴まった。

すぐに動き出す二人。


「お前、随分軽いな…」


ボソっと臣が呟いた。


「え?」

「ちゃんと飯食ってる?」

「え、うん…」

「もっと食えよな…」

「…うん」


キュってどうしてか、臣の手があたしの手に一瞬だけ重なったんだ。

でも次の瞬間…


「ちょっと…臣それわたしが重いって言ってない?」


隆二の後ろから思いっきり臣を睨みつけているゆきみ。

ゆきみを乗せてる隆二は「軽いって全然!」なんて笑顔でフォローしているけど、臣は笑うだけで。


「ちょっと、臣!笑ってないで何とか言ってよ!」


ゆきみの叫びにあえてなのか無視を決め込む臣が可笑しくて。


「臣〜」


後ろから臣の脇腹を小突いたらフワっとあたしの方に顔を寄せた。

思った以上にその距離が近くてカアーっと紅くなっているんじゃないかって。


「俺、奈々専門にしよっかな〜」


緩い臣の言葉が届いたんだ。




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