特別感




直人くんはモテル。

ダンス部を出て自転車置き場に行くまでの間に、すれ違う人すれ違う人に声をかけられていて。

隣を歩いているわたしを見て、みんな一瞬「え?」って顔をする。

それが意味しているのはきっと…臣の彼女じゃないの?って、まさにそんな目で。


「そんなにみんなわたしを臣の彼女にしたいのかな…」


思わずボソっと呟くと、直人くんがギョッとした顔で首を振った。


「断固反対!」


ちょっと必死な直人くんが犬みたいで可愛い。

靴を履き替えて外に出ると、グラウンドいっぱいに運動部が活動していて。

一番奥に野球部。

横で陸部。

反対側の横で岩ちゃんのいるラクロス部がミニゲームをしていて。


「あ、岩ちゃん!」


いつもチャライ岩ちゃんが真剣に的を狙っているその姿は普通にかっこよくて。


「いつもあーいう顔してればいいのにね、岩ちゃん」

「はは。あれでも一応岩ちゃんなりにこだわりがあるんじゃねぇの?」

「こだわりって?」


キョトンと首を傾げて直人くんを見上げると、照れたようにハニかんでわたしの頭をポンポンって撫でた。


「ん〜なんつうか、奈々ちゃん以外の女には靡かないってのを岩ちゃんなりに態度に出してるっつーか。結構他の女子に冷たくない?」


言われて思い浮かべる岩ちゃん。


「わたしには普通だよ?」

「ゆきみちゃんは奈々ちゃんの幼馴染だからね」

「うん。でも、そうかも…あんまり注目して見てないけど。わたしには普通に話しかけてくる」

「だろ!好きな子以外興味ないよ!って。岩ちゃんみたいにモテル奴は特にな」


ニコってえくぼを見せて笑う直人くんだけど、お昼の直人くんの態度も当てはまっているんだって思えた。

でも何となくそれを言わない方がいい気がして。

スッと視線を逸らすと、ちょうど顔を上げた臣と目が合ったんだ。

途端にこっちに向って走ってくる臣。


「あ、」


スッと何でか分からないけど直人くんの背中に隠れて。


「え、ゆきみちゃん?」


焦ったような直人くんの声がしたすぐ後…「連絡しろっつったろ!」イライラ感満載の声と伸びてきた腕に捕まった。


「広臣!」


ヤバイって顔の直人くんに苦笑いが零れそうで。


「お前、殴られてぇの、直人」


怒りの矛先は当たり前に直人くん。


「邪魔されたくねぇし」

「お前だよ、邪魔は!」


言い返した直人くんを容赦なくパコンってする臣は真剣なんだけどちょっと可愛い。

手加減具合が可愛いんだ。





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