運命のカード




「行くぞ」


横から聞こえた声に視線を向けると臣がわたしを見ていて。

どんなに気まずくなったところでわたし達の歩幅は変わらない。

傍にいる距離も変わらない。

離れもしないけど、近づきもしない…―――近づいちゃいけないんだって。


「臣、奈々と一緒になれるといいね」


見上げた臣は何とも複雑そうな顔に見えて、それでも「…ああ」小さく頷いた。



講堂に入ると、1年全クラスが集まっていて。

全体でも目立つ臣や隆二はすぐに見つけられる。

すでに人だかりになっているそこに近づくと、隆二がわたし達に気づいて迎え入れてくれた。


「ゆきみと同じ班になれるといいな〜」


そう言ってフワっとわたしの頭を撫ぜる隆二。


「わたしも…」

「さっき奈々とも話してたんだけど、土曜日にキャンプのもの買出しに行こうって」


隆二の言葉に奈々も頷いていて「部活も休みだし、四人で行くか」臣の言葉にみんなが笑顔になった。


その後は祭りだった。

各班の代表がクジを引いてクラス別にそれを組み合わせて…


「うそっ!!」


直己くんの持っているカードと隆二の持っているカードがピタッとあって。

途端に笑顔になる隆二。


「マジでゆきみ!」


グイッと隆二がわたしの腕を引き寄せてそのまま胸にギュッと抱きしめる。


「信じらんない隆二と一緒になれるなんて!」


盛り上がるわたし達のすぐ後ろ、「あっ…」「マジで…」聞こえたのは奈々と臣の声。

そこには臣が持っているカードと、奈々と同じ班のエリーが持っているカードがピタッとあっていた。

まさかの展開で。

四人一緒にはなれなかったけど、わたし達四人の想いが繋がっている気がしてめちゃくちゃ嬉しい。

奈々の頬は紅潮していて。

そんな奈々を少し動揺して見ている臣。

でも次の瞬間―――――「隆二変わるよ」ポンと隆二の肩に手を置いてそう言ったんだ。

今ここにあった幸せな空気なんて当たり前に飛んでいって。

隆二がわたしと奈々を交互に見つめる。


「やだ…」


小さくそう言おうとしたんだわたし。

せっかく奈々と臣が一緒なのに何でそんなこと言うの?って。


「奈々、臣を頼むよ?」


ポンって隆二が奈々の頭を優しく撫でた。

奈々を大好きな隆二がわたしを見て。


「ゆきみ楽しもうな!」


隆二の言葉に胸の奥が熱くなった。




- 43 -


prev / next