愛の重さ




【side ゆきみ】


告白から戻ってきた直人くんは特に何かを言う訳でもなく、スッとまた自分の席についた。

そんな直人くんを見つめる奈々の瞳は何だかちょっと挑戦的に見えなくもなくて。

そんな奈々を鋭く見ていたのは臣だった。

チラっと隆二と目が合ったわたしを、隆二はいつもの如くニッコリ微笑むだけで。

いつも奈々の隣に座る隆二の気持ちが、少しだけ痛いんだ。

どこにもいけない複雑な気持ちを抱えたまま、一端教室に戻ったわたし達。

すぐに講堂に移動して総会が行われる。


「直己くん、よろしくね」


同じ班の級長直己くんがいることはわたしにとってはすごく有難くて。

今まで奈々達とほとんど離れたことのないわたしの寂しさを半分ぐらい紛らわせてくれている。


「残念だったね登坂一緒じゃなくて」


ポスってわたしの頭を撫でる直己くん。

見上げた先は糸みたいに細い目でわたしを見つめていて。


「これでいいんだよ」

「それ片岡が聞いたら喜ぶね…」

「直己くんは直人くんの味方なの?」


わたしの質問に目を泳がせてから視線を合わせた直己くん。


「いや…何か真っ直ぐじゃん片岡。だからほおっておけないっていうか…」


直己くんの言葉に、やっぱり直人くんの愛の重さを感じた。

出会ってまだほんの少ししかたっていないわたし達。

知らないことの方が多いのに、その中でわたしを見つけて選んでくれた直人くん。

臣や隆二みたいな歴史はなくても、その想いの深さはわたしを幸せへと導いてくれるんだろうか。


「俺と奈々ちゃんの協力もしてよ、直己!」


わたしと直己くんの横から顔を出す岩ちゃん。

既に二人の女の子を断っている岩ちゃん。

どうにも軽率に見えていまいち応援できない。

そもそもわたしにとっては奈々の気持ちが岩ちゃんに向くなんて思っていないけど。


「岩ちゃんは何で奈々なの?」

「え?俺?可愛いじゃん奈々ちゃん!」


…やっぱり軽い。

そもそも顔だけで奈々を好きだと言われることすら不服で。

顔は勿論美人だけれど、奈々のいい所は他にもいっぱいある。

そんなことを考えているのが顔に出ていたのか、フッて笑った岩ちゃんは「不満そうだね」そう言った。


「可愛いだけじゃないもの奈々は」

「だろうね。人が気づかない所をちゃんと見てるもんね奈々ちゃんは。悲しいくらい優しいよ」


…ちゃんと見てるんじゃん岩ちゃん!

チャラく見えてもこの人の想いだって本物なのかも…そう思ったんだ。




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