男の友情
「けど…見事にみんな別れちゃったねぇ〜」
岩ちゃんの言葉にテンションが落ちた。
キャンプの班決めで、見事に隆二と別の班になってしまったあたし。
あたし達より前に決まったゆきみと臣も見事に別れてしまっていて。
「でもまだ俺達は分かんないよね〜?」
あたしの頭をポンポンする岩ちゃん。
この後講堂で1年全クラス合同で班決めの続きが行われる。
そこで運がよければゆきみや臣となれるかもしれないわけで。
「わたし直己くんが同じ班だったからまだよかったけど…せめて奈々と隆二が一緒がいいなぁ」
「あたしも!ゆきみがいい!」
何でか臣の名前は出せなかった。
だけど臣はあたしをチラリと見ただけで何も言わない。
さっきまで優しかった臣は簡単にあたしを捨てる―――。
「岩ちゃんと奈々とか絶対認めない」
嵐の日、あんな風に岩ちゃんを殴った隆二だけど、今二人の間に流れている空気は別に至って普通で、男の人間関係は女みたいな女々しさがないんだってほんの少し羨ましく思う。
「片岡!呼んでる!」
不意に直人くんの所にきたクラスメイト。
視線の先には廊下で緊張気味の女子。
これはもしかして―――「告られるね」岩ちゃんがあたしの耳元でニヤって笑った。
でも立ち上がった直人くんはニッコリ微笑むとゆきみの前でしゃがんで手をギュっと握る。
「俺ゆきみちゃん一筋だから」
そう言って離れると、あたし達に背を向けて歩いて行った。
何となく耳を澄ましてその会話を聞いてしまう。
「なに?」
直人くんらしからぬちょっと冷たい言い方だった。
たぶん手紙を渡したんであろう女子。
渡して逃げていく女子を「待って」そう呼び止めた直人くんは、教室にいるあたし達にも聞こえるぐらいハッキリと自分の気持ちを言葉にした。
「俺、好きな子いるからごめん」
チッて臣の舌打ちが鳴り響いて、隆二の眉間にシワが入った。
「かっこいいなぁ、直人」
エリーだけは嬉しそうな声でそう言って。
「ゆきみちゃん愛されてんね」
続く言葉にゆきみがほんの少し泣きそうに笑ったんだ。
あんな風に堂々と告白することも出来ないし、ましてや「好きな人がいる」ってハッキリ言うことも出来ないあたし。
でも今朝、その一線を越えようとしている臣を見て、それが無理やりに思えて仕方なかったんだ。
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