四人の願い




【side 奈々】



頭の中が真っ白だ、あたし。

…さっき、3時間目が終わった後、ゆきみの所に行くって言った隆二の後をついていかなった。

ゆきみのクラスには臣がいるから…臣の顔、どんな風に見たらいいのか分からなくて。

でもそしたら隆二と入れ替わるみたいに直己くんが走ってきて、直人くんを連れて行った。

だから何となくゆきみが絡んでいるのかもしれない…って、あたしもその後を追った。

屋上へ一人で出ていく直人くんの行先にはゆきみがいて…。


「俺のこと…見て欲しい…」


そう告白した直人くんに小さく頷いたゆきみ。

その時初めて生まれた感情…。

臣か隆二以外の相手とゆきみが付き合うことの矛盾さ。

直人くんが悪いわけじゃないのに、どうしてかゆきみの相手として直人くんを認めたくない。

やっぱりゆきみには心から好きな人と一緒に居て貰いたい…そう思うから。


「奈々?」


4時間目の道徳授業であたし達のクラスのキャンプの班決めが行われている。

教卓に立ってクラスを仕切っている直人くんをボーっと見ていたら隆二に呼ばれた。


「え?」

「どうしたの?ボーっとしてるよ?」

「…隆二は、臣とゆきみがもしも付き合うことになったら…どうする?」


あたしの質問に目を逸らす隆二。

返答に困っている時の隆二の顔がそこにあって。

だから思った。

隆二もゆきみのことが好きなのかも…って。

あたしもゆきみもやっぱりどっちも選べないんじゃないかって。

それは臣であり、ゆきみであり、あたしも同じで。

このまま4人で何も変わらずいられる方法はないのかって、思ってしまうくらいに。


「さっきゆきみにも聞かれて…」


でも隆二の言葉はちょっとあたしの想像内じゃなくて。


「え?」

「奈々と俺が付き合ったらゆきみはどうなるの!?って…。ゆきみが誰を想ってるのかとか俺分かってなくて…」

「え?何言ってんの、隆二…」

「え?奈々?」

「分からないの?ゆきみが誰を想ってるのか…」

「…臣?」

「隆二もだよ。臣も隆二もだよ…。あたしだってそう…だからこのまま4人で居たい…それだけでいい」


そんな願いも叶わないんだろうか。

ほんの少しイラついたあたしに気づいた隆二は「ごめん、その通りだ」そう言ってあたしの頭を小さく撫でた。

その手が温かくて何だか泣きそうになってしまう。

隆二を困らせたいわけじゃないのに、こんな風な自分が少し惨めで嫌になる。





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