好きの種類




「隆二…臣がおかしい…」


隆二に甘えたら楽で。

結局わたし達四人はどこかで頼られることも分かっていて、期待していて。

わたしの言葉に視線を臣に移したであろう隆二。

真っ直ぐに隆二を見つめるわたしに、すぐにその視線は戻ってきた。

いつもの優しい瞳の隆二。

わたしの前髪をふわりと撫でた。


「何かあったの?」


隆二の声に小さく頷く。


「わたしのこと好きって言う…」

「…うん。ゆきみは?ゆきみは臣のこと好きじゃないの?」


分かりきった言葉を投げられて。


「好きに決まってんじゃん!」


ちょっとだけムキになってそう答えた。

でもどうしてか隆二の顔は曇っていて、何となく納得していない…そんな表情に見えた。


「臣の言う好きとゆきみの思う好きの種類が違う…そう言ってるんだよね、ゆきみは…」


隆二は分かっているんだって。

臣の言う「好き」が…臣の言葉を信用していない訳じゃない。

でも、奈々への気持ちがどうしても嘘に思えなくて。


「隆二はいいの?臣とわたしが恋人になっても…。隆二と奈々はどうするの?」

「俺は…それがみんなの幸せならそれでいいって…」
「ばかぁ!!!」


隆二と繋がっていた手を離して思いっきり振り払った。

そんなタテマエの気持ちが知りたい訳じゃない。

でもそうするしかできない自分達の関係を恨んだ。

こうするようにしていたのは、他の誰でもないわたし達四人で。


「わたしが隆二のこと好きだって言ったらどうすんのよっ!!」


感情が追いつかなくて、そんな言葉を隆二に浴びせてわたしは廊下を出て屋上へと行った。

パタンってドアが開いて追いかけてきたのは直人くんだった。


「ゆきみちゃん…」


ギュって後ろからわたしを抱きしめる直人くんに意味もなく涙が溢れる。


「直己に聞いて、追いかけてきた…」


そう言って強くわたしを抱きしめる直人くん。

わたしをこうやって一番に想ってくれる直人くんと一緒に居たら幸せ?

そうしたら臣は…――――


「もう分かんない…」

「俺構わない。ゆきみちゃんが広臣が好きでも、隆二が好きでも…それでもやっぱ俺の女神はゆきみちゃんだけだから。どんなゆきみちゃんでも俺、絶対に好きでいる自信があるよ…」


くるりと身体を反転させて真剣な表情でわたしを見つめる直人くん。


「だから俺のこと…見て欲しい…」


願いのような直人くんの告白にドキンとした。




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