意地悪な岩ちゃん




「岩ちゃんは奈々と同じ班になりたい?」

「そりゃね〜。ゆきみちゃんは?」

「なりたいよわたしも!」


臣が女の子に呼び出されたのはさっき。

高校生になって初の呼び出しにきちんと答えるべく臣が中庭へと行ったからわたしは岩ちゃんと二人きりで。


「ねぇ何でキミ達ってそんな仲がいいくせにどこか遠慮してんの?」


わりと直球な岩ちゃんに言われて内心ドキンとした。

わたしは目を逸らして校庭を見つめる。

昨日の嵐とはうって変わって今日はすごくいい天気で。


「遠慮なんて…」

「ゆきみちゃんはどっちが好きなの?臣と隆二…」


答えにくいその質問に、少し前の席の直己くんの視線も飛んできた。


「どっちも好きだけど…」

「同じ答えだなぁ奈々ちゃんと。でも俺は騙されないよ」

「騙してなんて…」

「じゃあ答えろよ。どっちか。直人なんて言っても誰も信じないよ」


岩ちゃんはやっぱり意地悪なんじゃないかって。

聞いたくせに分かっていそうな岩ちゃんが何だか嫌で。

真っ直ぐすぎて見習えそうもない。

誰かが本音を言ったら誰かが傷つくかもしれないから…だから誰も自分の気持ちなんて言わないんだって…。

それがわたし達4人であって、きっとこの先も何も変わらない。


「それは俺も信じないし、俺以外を言うことも許さない…」


ポスって臣の手がわたしの頭を撫ぜた。

見上げた臣はわたしの頬に手を添えて「さっきあの二人にも言ったけど…俺マジでゆきみのこと好きだから…」サラリと言うんだ。

それがいつも言ってる愛情表現みたいな言葉とは少し違っていることはすぐに分かった。

分かったけれどそれを今ここで認めることはできなくて。


「わたしも好きだよ、臣」


だからそう言ったんだ。

いつも通り、何も変わらないって顔で。

臣はそんなわたしに不満顔で。


「真面目に言ってんの、俺!」


そう言って頬の手を首にかけてグイっと固定される。

真っ直ぐにわたしを見下ろす臣は色気があって…


「真面目に答えてるよ…」

「じゃあキスするよ?」


そう言って近づいてくる臣は本気で。

首を降って離れるわたしが慌てて臣から逃げるように廊下に出た。

どうしようもなく胸がドキドキして鼓動が早まる。

こんな姿見られたくないのに、そこにいたのは隆二で。


「ゆきみ」


わたしを呼んでその手を伸ばしてギュっと掴まえられたんだ。




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