キャンプ




【side ゆきみ】



「直己くんってそういうタイプ…?そういうイメージなかったなぁわたし…」


ニッコリ笑ってそう言うと、相変わらず細い目を更に細めて「ちょっと…」って言うんだ。


「ゆきみちゃんのそういう小悪魔な所に直人も惚れたんじゃない?」


ポンってわたしの頭をかする岩ちゃんの手に視線を向ける。

わたしの奈々にキスしちゃった岩ちゃんは言っちゃえばわたしの敵でもあって。


「岩ちゃんに触られたらキスされちゃう…」


口元を手で押さえてやった。

カラコン仕様の茶色い瞳でジロっと睨まれて。


「人聞き悪いな、好きな子にしかしないって俺」

「言っとくけど、奈々を傷つけたら許さないからね」

「…本気で噛みつかれそうだから気をつけるよ…」


苦笑いをする岩ちゃんに直己くんと三人で笑ったら、臣と健二郎が教室に入ってきた。

続く先生の登場に、臣と会話もできずに席についたんだ。



1時間目は道徳で。

級長の直己くんが前に出てうちのクラスを仕切っている。

奈々のクラスでは直人くんが同じように仕切っているのかと思うと、やっぱり少し興味があった。

キスは初めてだったし吃驚したし怒ったけれど、わたしの中で直人くんって存在はやっぱり少し特別で。




「というわけで、来週の金曜日から二泊三日でキャンプに行くことになりました」


直己くんの言葉に眠かった頭が一気に冷めた。


「キャンプ!?」


思わずそう声に出すと隣の臣がクスって笑った。

反対側の岩ちゃんは少しばかり呆れた顔を見せていて。


「班ですが、1年の交流を兼ねて…ということなので、他のクラスと合同になります。各クラスでくじ引きしてそれを総会で纏めてからの発表になります」

「…合同なの?」


わたしの質問に教卓にいる直己くんが「そうだよ」優しく答えてくれた。


「臣!奈々と隆二と4人一緒になれるといいねっ!」


思わず漏れたわたしの本音に、臣が何の迷いもなく「なれるよ」そう言ってわたしの手をギュっと握る。

高校生活最初の泊まりがけのBBQだなんて、絶対楽しいに決まってる。

わたしの心はウキウキで。

だからこのキャンプがわたし達4人にとっての悲しい旅行になるなんて、この時は思いもよらないんだ――――。


動き出した恋の嵐はもう、誰にも止められない…。




- 36 -


prev / next