カミナリ
「あたしの周りにはいないタイプだよ、岩ちゃんって」
浮かぶのはいつだって臣であり隆二だけど、それ以外でも岩ちゃんみたいな人は初めてで。
ほんの少しだけ興味がわく。
「へぇ!やっと俺に興味持った?」
嬉しそうな顔を見せる岩ちゃんの笑顔は単純に可愛くて。
金に近いサラサラの髪と犬っぽい顔がよく合っている。
どこぞのアイドルみたいな笑顔をあたしに飛ばす岩ちゃんに微笑み返した瞬間――――空がピカッ!っと光ったんだ。
真昼間かってくらい明るくなった次の瞬間、ドデカイ雷音がここら一体に鳴り響いた。
同時に教室内が真っ暗になって。
「キャアアアア―――――!!!」
まさかの停電に冷静さを失ってその場にしゃがみ込んだ。
「ちょ、大丈夫だって!」
しゃがんで悲鳴をあげるあたしを落ち着かせようと腕を取ってそのままフワっと抱きしめる岩ちゃん。
抱きしめるって行為が今のあたしには雷以下の行為であって、それを気にしている余裕なんてカケラもない。
「やだやだやだ、怖い、嫌い、臣…臣…臣どこ…?おみぃ…」
感情が溢れて涙が込み上げてくる。
岩ちゃんがあたしを抱きしめる腕に力が込められた気がして…
だから岩ちゃんを見つめた時だった――――
ガラリと開いた2組のドア。
そこにいたのはどうしてかずぶ濡れの隆二で。
大きく肩で呼吸をしている。
あたしと岩ちゃんを見てズカズカ入ってくると、まるで今朝のデジャブかと思うくらい、岩ちゃんの胸倉を掴みあげて、そのまま勢いまかせに殴りつけた。
ガタガタガタッって机にぶつかって後ろに倒れる岩ちゃんは殴られた口端を手で拭う。
「俺の奈々に触るんじゃねぇ」
吐き出すような苦しそうな隆二の声が聞こえた後、あたしの腕をグっと引いてこの雨の中歩き出した。
すぐに自分のブレザーを脱いであたしの頭に被せてくれる隆二。
運よくバスがすぐに来て二人でそこに乗り込んだ。
マンションまでの距離がやけに長くて。
坂の下にあるバス停で降りたあたし達はそのまま早足でマンションまで歩いた。
エレベーターのボタンを押して中に入ると、隆二がギュっとあたしの手を強く握る。
何も言わずに無言で11階についたエレベーターから降りるとあたしの家を通り越して隆二の家に誘導された。
ドクンと胸が脈打つ。
あたしの手を引いてドアを開けた隆二は黙っているせいか何だか怖くて。
「隆二どこ行くの?」
あたしの言葉にグイっと隆二宅へあたしを連れ込んだ。
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