バレたキス
「何それ…直己くんがゆきみを送ったの?」
たまたま隣にいた直己くんを見上げて聞くあたしに苦笑いを飛ばす直己くん。
一歩前に出て直人くんに近寄るあたしを見つめる直人くん。
「どういうことよ!?ゆきみのこと任せたよね、あたし達…」
「奈々、落ち着けって」
隆二があたしを後ろから掴んで自分の胸に閉じ込めるけど、あたしはジッと直人くんを見つめていて。
「悪いけど…俺とゆきみちゃんの問題だから…誰にも言うつもりない…」
そう言ったんだ直人くん。
でも次の瞬間、ガンッ!!!!って、直人くんの横にある壁に腕を叩きつけた臣。
「舐めてんじゃねぇぞ直人。ゆきみ悲しませやがって。俺等が黙って見過ごせるわけねぇだろ」
ド低い声で壁をもう一度殴りつけたんだ。
「…キスでもしたんだろ、どうせ…」
サラリとそう発した岩ちゃん。
気付いたらあたし達の側にいて。
「ゆきみちゃんにも原因はあるんじゃないの?直人だってこの二人がどんだけゆきみちゃんと奈々ちゃんを大事にしてるのかなんて分かってるでしょ。それでも好きだから少しでもいい雰囲気だったら感情が溢れるだろうし…自分を見て欲しいと思ったら行動するのが男でしょう…」
最後の台詞はしっかりとあたしを見つめてそう言った岩ちゃん。
岩ちゃんの言葉に初めて動揺の顔を見せているのは直人くんで。
「ふっざけんなよっ!!」
そう言って拳を上げた臣を、慌てて止めたのは直己くんだった。
暴れる臣を無理やり後ろから押さえつける直己くん。
悔しかった。
ゆきみを軽く見られたことだってそうだけど、あたしに対して罪悪感すらなさそうに見える岩ちゃんが。
「これ以上あたし達のことかき回さないでよっ!」
「…無理だよ、俺だって好きなんだから。そう簡単にひけないよ。けど…」
そう言った岩ちゃんは、あたしのことをジッと見て軽く微笑むとこう続けたんだ。
「けどもう無理やりキスはしない。昨日は悪かったね、奈々ちゃん…」
みんなの前で。
臣と隆二の前で昨日のことを簡単に話したんだ。
あたしが黙ってたのに…
カアッ――って顔が赤くなるのが分かった。
何だかよく分からないけど鼻の奥がツーンとして視界がボヤっと滲む。
「お前、ふざけんじゃねぇよっ!!」
さっきの臣とは別、隆二の怒鳴り声がしたと思ったら岩ちゃんの胸倉を掴んで隆二の拳まであがった――――
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