怒りの矛先
【side 奈々】
「悪い、やっぱ先行ってて」
そう言ってマンションの下、隆二の自転車の後ろに乗ったあたし達にそう告げて臣がマンションに戻った。
ゆきみの所に行ったんだってすぐに分かった。
「…臣に任せて行こうか俺達は」
隆二の言葉に「うん」小さく頷いて腰に腕を回して掴まった。
横向きで座っているあたしを軽々のせて学校までを走る隆二。
いつもはいるゆきみと臣がいないだけでやっぱりここは少し寂しくて。
それでも隆二があたしを落ち込ませないようにって色んな話を振ってくれて。
だから後ろからギュっと隆二にくっついていた。
学校に着くとあたしの顔を見て近寄ってくる直人くん。
「おはよう、直人くん…」
「奈々ちゃんおはよ!ゆきみちゃんは?」
焦ったような困ったような複雑な顔で直人くんが切羽詰ったように聞いてくるけど。
「休みだよ今日は。風邪気味だから」
あたしの後ろから隆二がそう言うと、直人くんは肩をがっくり落として「マジかよ…」小さく呟いた。
そのまま隆二は直人くんの側にいたエリーに視線を移して「どうなってんの?」そう聞いたんだ。
エリーは苦笑いで「ん〜…」曖昧な返事しかしない。
やっぱり昨日直人くんと何かがあったであろうゆきみ。
ゆきみの欠席を聞いて物凄く落ち込む直人くんに…1時間目の授業までまだ時間の余裕のあったあたし達は窓際の席でゆきみとのことを聞こうとしたんだ。
一歩直人くんに近寄った次の瞬間、勢いよく2組の後ろドアを開ける音がして。
走ってきたのか少し大きめに肩で呼吸をしている臣が、手前にあった椅子を思いっきり蹴り飛ばした。
その音に吃驚してみんなが臣を見つめる。
ジロっと睨んだその先には勿論ながら直人くんがいて。
「顔かせよ、直人」
一言だけ言うと、そのまま廊下に出た。
直人くんはグッと拳を握って顔を臣に向けてその後をついていく。
慌ててあたしと隆二もついていって。
そこに今登校してきたんであろう、ゆきみのクラスの級長直己くんが足を止めた。
「…なに?」
直人くんの言葉に臣は廊下の壁に背をつけたまま組んでいた腕を外して視線を直人くんに向けた。
「ゆきみに何した?」
まぁそうなるって分かってた。
聞かれた直人くんは「広臣には関係ない」きっぱりとそう言って。
だから臣が威嚇するように首をコキっと曲げて直人くんを見る。
「俺等言ったよな、アイツに触れるな!って。何で直己がゆきみを送ったんだよ?」
聞こえた真実に隆二と顔を見合わせた。
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