見たかった景色




走って走って、さっきの奈々と二人でいた所まで走った。

今更だけど直人への気持ちだって確かにあった。

隆二へのもどかしさを拭ってくれたのは間違いなく直人で…。

だけどその優しさと愛は違う。

わたしが欲しいと思うのはこの世でただ一人、隆二だけ…


「隆二!」


奈々が見つかったのか、臣が見つけたのかは分からない。

だけど、三人並んで星を見上げるそこにわたしがいないのは嫌。


「ゆきみ、」


ちょっと驚いた顔の隆二が立ち上がってすぐにわたしの所へ駆けてくる。


「隆二、隆二…」

「どうしたの?なんで泣いてんだよ…」


隆二の顔見たらよく分からない涙がこみ上げてきて…ボロボロ涙の止まらないわたしを心配そうに見ている。

肩に置かれた隆二の手に力が籠る。

見上げた隆二の背後に、広大な星空が見えて。

そこに紛れて同じように心配顔の奈々と臣。

ああ分かった、なんで泣いてるのか。

分かったよ、隆二、奈々、臣。


「隆二、好き。隆二が大好き。」

「…え?」

「もう離れない、わたし。ずっと隆二の傍にいる。」

「なんだよ、直人は?」


無言で首を振るわたしに、隆二の瞳が小さく揺れた。

止めどなく流れる涙を隆二の優しい指が拭ってくれて、コツっとオデコがくっつく。


「俺…―――約束する。一生ゆきみのことだけ愛してるって…」


たかが高校生のわたし達が愛だの恋だの可笑しいかもしれない。

だけどここにあるのは嘘でも偽りでもない、やっぱり愛だと思う。


「わたしも、一生隆二だけ愛してる」


奈々がいて臣がいて、そして大好きな隆二のいるこの景色が、ずっと見たかった。

この涙は、うれし涙なんだって。




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