お決まりの台詞
それからというもの、直人くんのゆきみへのアピールが急激に変わった。
どうやら直人くんは、隆二に言われたことで逆に燃えちゃったみたいで…
「俺たち現代版のロミオとジュリエットだよゆきみちゃん」
お昼休みがまた賑やかになっていた。
相変わらず岩ちゃんも一緒に来ていてあたしの隣を陣取れるようになっていた。
高校生活が始まって早1か月がたとうとしていたその日、その春の風は突然訪れたんだ。
「これ、今日二人で見に行かない?」
そう言ってゆきみに映画のチケットを差し出した直人くん。
そこに書かれているのが「ロミオ&ジュリエット」。
「あ…見たい…」
チラリとゆきみの視線があたしに飛んできた。
「二人で?」
当たり前に口を挟む臣は眉間にしわを寄せて直人くんに強い視線を送る。
勿論気にしていないって顔で「そ、二人で」ニコっと微笑んでゆきみの肩を軽く叩く。
今日はボイトレに行く隆二とバイトが入ってるあたしは先に帰る予定で、ゆきみは臣のサッカー部が終わったら一緒に帰ることになっていた。
映画も見たいね〜って話はしていたけど、いつ行くとか決めてなくって…
「行ってきたら?映画、見たかった奴だもんね、ゆきみ!」
あたしがそう言うと、吃驚した顔を見せたのはゆきみじゃなくて臣と隆二で。
奈々なに言ってんだ!?って、そんな顔。
でも…―――「うん、見てくる」そう言って直人くんを見たゆきみはちょっと嬉しそう。
「マジで!?」
言われた直人くんは飛び跳ねちゃいそうなくらい嬉しそうで。
「待てよ、直人!」
「なによ?」
「絶対ぇ家まで送れよ、責任もって」
ド低い威嚇する見たいな声で言う臣に余裕のドヤ顔を飛ばす直人くん。
「分かってる」
「危ない道通らせないでよ。繁華街も危ないのいっぱいいるから何かあっても絶対守ってよ?」
隆二の言葉にも「かしこまり」って嬉しそうに答えていて。
ちょっと納得いかない顔ながらも「「それから!」」臣と隆二の声が揃って…
「「ゆきみには絶対触るんじゃねぇぞ!」」
お決まりの台詞が投げつけられたんだ。
誰かにゆきみであり、あたしを任せる時は必ずこの台詞を言うのが二人の決まりのようで。
「はいはい、約束します!」
適当そうに答える直人くんだけど、「え、それは…」どうやら売り言葉に買い言葉だったらしく、苦笑いで「分かったよ…」そう言った。
「直人くん宜しくね」
ゆきみの言葉に直人くんが微笑んだ。
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