▼ 101回目1
「水族館のチケット?」
「そう、会社で哲也に貰ってさ。一緒に行かない?」
「うんっ!行く!アキラと一緒ならどこでも嬉しいっ!」
そう言って背の高いアキラの腕にギュっと抱きついた。
そんなあたしをギュって抱きしめてくれちゃう大好きなアキラ。
―――ねぇアキラ。あたしすごく幸せだよ。
「すごい人…水族館ってこんな人多いもん?」
「ここ新しくできたばっかだからかな?ユヅキはぐれんなよ」
そう言うなり、スッとアキラの大きな手がわたしの手を握り締めた。
それだけでドキっとする。
アキラと触れあっているってことがあたしにとってはすごく嬉しいことなんだって実感。
どれが何の魚かなんて正直よく分からない。
でも最新の設備でできているこの空間はちょっと未知な感じで、心地良い。
人の多さもアキラと密着するのに程よく必要だな〜なんて現金なことを思っていた。
「クラゲ…奇麗だね…」
「うん。俺昔刺されたことあって、どいつだっけな〜俺を刺したの。すっげぇ腫れて泣きそうになったの!」
「あはは、アキラが泣きそうに?」
「そう。クソ痛てぇのよ!ビリビリ痺れちゃって…即病院行き。地元の奴らめっちゃ笑ってんの、酷でぇよな…」
「あたしなら心配して病院まで着いてく!」
勢いづいてそんなことを言うあたしに肩越しにアキラの優しい目が降りてきて…
「ユヅキならそう言うと思った」
クスってそれからまた笑うんだ。
キュンって。
アキラの目細めて笑う顔が大好きで。
今日は何回その顔見れる?
何回あたしにそうやって笑ってくれる?
出逢った頃よりも今の方がずっと好きで。
アキラを知れば知るほどその想いは募るばかりなんだ。
「イルカショーやるみたい、行くか?」
「うんっ!見たいっ!」
イルカよりもアキラの笑顔が見たい…と思いながらも、あたしの横で嬉しそうにしてくれるアキラがいっぱい見たくて。
人混みの中、移動する前にキュっとアキラが強くあたしの手を握り締めた。
「お、空いてる空いてる!」
そう言うけど…―――一番前だよ、そこ。
「ねぇアキラ。そこ絶対濡れると思わない?」
既に椅子に水の跡が残っていて。
鞄からタオルを出したあたしはそこをサッと拭いた。
「あ、悪り、汚れちゃったな。後で新しいの買うから許してな?」
ポンってあたしの頭を優しく撫でてくれて…
その笑顔があれば何でも許しちゃうよ…って言葉は恥ずかしいから飲みこんだ。
照れて俯くあたしの手を引いて、一番前のそこに座った。
イルカショーの始まり。