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「ほんとうに申し訳ありません。」
――――――「マイコさん、そんなに謝らないでください。僕ら頑張るんで!ね?」...ふわりと肩に手が乗っかる。
顔を上げた私に見せたその笑顔に、あの日落ちたんだ、...恋に。
連日の業務で確かに疲れていた。だけどプロとしては失格だった。新曲のMVの衣装、陸ちゃんの分だけ何故か間違えてしまったせいで、みんなを待たせる事になってしまって、そんな私にかけてくれた陸ちゃんの優しい言葉と笑顔が、あの日からずっと私の胸の中にある。
好きだと、認めざるを得ないぐらい毎日陸ちゃんは優しかった。
「朝海ちゃん、健太のケーキ何味にする?」
「餃子!」
「...それはちょっと、」
来たる島根公演に向けて水面下で着々と準備が進められていた。メンバーの神谷健太くんのお誕生日を迎えるその日、サプライズケーキやら何やらで、私たちRAMPAGEのマネージャーは忙しい。ただでさえツアー真っ最中で時間が取れないというのに、メンバーが16人もいるから、そんなイベントはわりとひっきりなしにやってくる。
「じゃあ餃子の形!あーでも餃子は餃子でしか健太興味無いかも。マイコさんの好きな味にしませんか?この際!」
「え、私?」
思わず自分を指さして苦笑い。朝海ちゃんがニッコリ笑って続けた。
「だって、その日はマイコさんもお誕生日ですもん!」
「覚えてたの?」
「酷いなぁ、忘れるわけないじゃないですか。大好きなマイコさんのお誕生日ですよ。」
ジーン。歳のせいかウルっときてしまう。正直歳をとりたくない...って思っているから昔ほど誕生日に特別感はなかった。むしろそっとしておいて欲しいくらいだ、なんて思っていたのに。
こうやっていざ言葉にされるとやっぱり嬉しいものなんだと実感しちゃうなんて。
「朝海ちゃーん、ありがとう!なんかすごく嬉しい。でもやっぱり健太くんがメインだから、朝海ちゃんの好きな味にしようか?」
「いやいや、ほんとにマイコさんの好きな味で。」
散々朝海ちゃんに押されて結局私の好きな味のケーキになった。