▼ hagu1
「あ、もう、風邪ひくよ、起きて、てっちゃん!」
コタツに足を突っ込んでクッションを抱きしめたまま綺麗な寝顔をさらしている恋人の哲也。
合鍵を使って現場から直接ここに来たんだろうか、家に帰ると珈琲のいい香りが漂っていた。
だけど当の本人はコタツで幸せそうな寝顔…
仕事で疲れた私には最高の癒しだけど、これで彼が風邪を引いたらたまんない。
軽く腕を掴んで揺すると「うーん」と口端を緩めた。
「てっちゃん風邪ひいちゃうから、寝るならベッドで寝て」
「んー一緒に寝てくれる?」
甘えた声で半笑いの哲也。
その綺麗な顔でそーいう台詞言うなんて、確信犯だな、このー。
なんて思うものの私の頬は緩むだけで。
結局のところ、甘える哲也が可愛くて仕方がない。
だって誰かがいると哲也は至って普通の恋人を演じているから。
こんなに彼が甘えん坊だってことを知っているのは私だけで十分。
「てっちゃん甘えたさん?」
「そー。俺ユヅキの前ではいつでも甘えてたーい」
そう言って手を伸ばす哲也。
あーもう、この誘惑負けっぱなし。
っていうか、1度だって勝てた試しがない。
ずるいよ、その顔。
唇尖らせないで。
アヒル口やめて!
キスしたくなっちゃう…
「ねぇ、キスして」
きた、甘い台詞。
もう私、我慢できない…