▼ イニシャルH1
「納会の準備進んでる?」
「バッチリです!女性はみんなサンタクロースのコスプレが定番なんですね…」
一年後輩の直己くん。
哲也さんのフォローで私も時々この直己くんの面倒をみるようになった。
物凄い背が高くて外見はちょっと怖いんだけど、そんな外見とは裏腹に直己くんはすごく気の利く子でむしろ女の私と話がよく合う。
ゆえに話しやすいからついつい親近感わいて色々話ちゃってるんだけど、直ちゃんとのことだけは今だに言ってない。
別に社内恋愛が禁止なことはないんだけど、適当にからかわれるのは御免だし、なんとなく秘密にしておきたくて。
と言っても哲也さんと黒木さんには去年バレちゃったけど。
「ユヅキさん、クリスマスは?」
今年はクリスマスは三連休で、26日に挨拶回りと納会があって、年内は終わり。
当日だとえらい大変だからって早めに準備を勧めたら、仕事のできる直己くんはもう既に8割終わってるらしく、2人でランチに来ていた。
「え、クリスマス?」
「はい。彼氏とデートですか?」
「…えっ!?」
細い目で私を見つめるけど、その心までは見えなくて。
彼氏がいるって言った方がいいよね、そろそろ。
「うん…」
「いなかったら、僕とデートしてくれませんか?」
ほぼ同時だった。
だけど、低音の直己くんの声の方が当たり前に大きくて、自分の言葉を飲み込まれた私はキョトンと直己くんを見つめた。
「え!?」
もう一度首を傾げて聞く。
直己くんはクスッと微笑んで今度はハッキリと言い放ったんだ。
「ユヅキさんのこと、気になってます…」
直己くんの後ろ、お店の外を通りがかった直ちゃんが私に気づいてこっちに向かってくるのが見えて、ドクンと胸が大きく脈打ったなんて。