▼ Charge1
お昼休み、おもむろに雑誌を広げたあたしはそれを食入るように見つめた。
というか、頭の中に叩き込む。
【男の好む女のタイプ】そう見出しのついた女性誌。
これで亜嵐はあたしのもの。
の、はずだった…―――――
「か、帰った!?」
「はい。さっき終わったんで帰りましたよ。見学に来た女子と一緒に…」
ガーン。
ガーン。
ガーン。
ショックを通り越して倒れそう。
いや、ショックで倒れそう。
放課後、男好みのメイクを雑誌を見ながらひたすら研究していたあたしは、そろそろ亜嵐の部活が終わるだろうって、ダンス部に顔を出したんだ。
遅かった。
しかも見学に来た女子と帰ったって、誰よ!
あたしの亜嵐を横取りしようとしてる奴!
マジ顔かせ!っつーの!
あーこのまま引き下がれない。
悔しい!家行っちゃおうかな、もう!
LINEを開いて亜嵐にメッセージを送る。
【亜嵐、逢いたい!】
こうなったら直球投げてやる!
うかうかして誰かに取られるなんてゴメンだよ。
だけどその日はなかなか既読にならなくて、夜遅く【先輩ごめんね、友達と遊んでた!】当たり障りのない返事が小さくスマホに入った。
2歳年下の亜嵐を初めて見たのは委員会で遅くなった日のことだった。
渡り廊下から見える裏庭のそこで、ダンスを踊っている亜嵐が目に入って足が止まる。
うちの高校にあるダンス部はイケメン揃いって聞いてたけど。
「かっこいい…」
一目惚れだったんだ。
それ以来、校内中亜嵐を探しまくって、やっと見つけたら1年だった。
3年のあたしが思いっきり追いかけるもんだから亜嵐もからかわれていると思っているのか今だに本気にされない。
いつでも本気で好き!って言ってるのに、悔しいな。
【明日一緒に帰りたい!】
そう送るとしばらくしてから【明日は部活終わった後みんなで集まるけど…】【分かった】
これ以上色々聞きたくなくて言葉を遮った。
ねえ亜嵐、あたしのこと嫌いじゃないよね?
あたしのこと、迷惑じゃないよね?
それならそうって言えばいいんだよ。
いつまでも曖昧な亜嵐の態度に、年上のあたしが追いかけていることが何だか惨めに思えてしまうなんて。
【じゃあ、亜嵐の好きな女のタイプ教えて!】
【え?好きな女のタイプ?うーん、面白い子、かなぁ…】
【顔は?】
【顔?それは、可愛いにこしたことはないですけど…】
【ギャルと清楚、どっち派?】
【…中間ぐらいかな】
【分かった!また明日!】
またあの雑誌を開いて穴が開くぐらい読み込んだ。
メイクも色々研究して翌日、あたしなりに亜嵐のタイプを再現した、つもりだった。